厳しい不況が続く中、経営状況に悩みを抱える飲食店は多い。しかし、どんな時代にも、多くのお客を惹きつける繁盛店は必ずある。そこで、日経レストラン「悩み解決クリニック」専任アドバイザーや、小規模飲食店向けに集客サポートを行う「集客UP塾」塾長など多方面で活躍し、数々の飲食店を繁盛店へと成長させてきた株式会社キュアシステムズ代表取締役の土屋薫氏に、繁盛店の集客ノウハウについて話を聞いた。
「元気の良かった飲食店でさえ、現状の市場動向に合わせて計画的な経営をして、前の年と同程度の売上を確保するのが精一杯な状況です。こうした努力をしていない飲食店は、当然ながら厳しい状況に置かれています」。経済の冷え込みにより、飲食店を訪れる客足が遠のいている現状を集客UP塾塾長の土屋薫氏はこう説明する。
「インターネットを通じて良質の食材を手に入れやすくなり、友人と自宅で食事を楽しむ『家飲み(うちのみ)』が増えるなど、消費者の食事の楽しみ方やもてなし方が変化していることも理由の一つと考えられます」と、土屋氏は飲食店業界苦戦の理由を分析する。
この苦境を打開するために多くの個人店や小規模チェーン店の店主は、集客力を上げるアイデアに頭を悩ませている。しかし、大手外食チェーンを真似て不特定多数に向けた広告を作ったり、安易な商品の値下げに走ることも多く、かえって状況を悪化させているケースが少なくない。土屋氏は、全国各地の飲食店をくまなく見てきた経験をもとに「個人店や小規模チェーンの飲食店は、大手企業と異なる手だてを講じることが重要」とアドバイスする。
土屋氏が長年にわたって集客UP塾で伝えてきた集客力向上の秘訣は、「店主の“思い”を明確にする」ことにある。おいしい料理や心のこもった接客も大切だが、店そのものの価値を向上させるためには何より店主の“思い”が欠かせない。
大企業が展開する飲食店や多くのファンを獲得している繁盛店のブランディングには、有名料理人の名前を冠したり、長い伝統を強調していたりするのを目にする。小規模飲食店においては、店主がどういった思いを胸に秘め、店作りに励んでいるのかを明確に示すことがブランディングになる。「店主の“思い”に賛同してくれるファンを作り出すことが、今の厳しい生存競争を生き抜く条件」というのが土屋氏の考えだ。
個人店や小規模チェーンの飲食店による店頭での情報発信について土屋氏は、「見せ方を工夫すれば大きな効果が期待できる」と指摘する。「厳しい経営状態の中、高額な広告費を捻出する必要はありません。店頭での情報発信はコストをかけずに行えます。また、必要に応じて情報を素早く切り替えられるので、小規模店には理想的な販促スタイルといえます」と語る。
土屋氏はさらに「歩行者や運転者が遠くから視認できる大判サイズで販促物を作り、まずは興味を持ってもらうことが重要」と付け加える。土屋氏は集客UP塾の会員にも、写真でも文字でも、店主の“思い”を明確に表現することで他店との差別化が図れ、独自の価値を生み出すことにつながるとアドバイスしている。
集客UP塾の会員として、土屋氏のアドバイスを受けた名古屋にあるきしめんの店「名代きしめん げんき庵」の店頭。遠くからでも目につく大判ポスターやバナーを掲示している。
さらに土屋氏は、個人店や小規模チェーンの飲食店が繁盛するために、「基本価値」「周辺価値」「情報価値」の3つの価値の重要性を説く。土屋氏の考えはこうだ。飲食店の「基本価値」は料理そのもの。さらに接客スタイルや店舗デザインなど、基本価値を取り囲む「周辺価値」が存在する。これに加えて今、集客力向上に重要なのが「情報価値」だ。この「情報価値」こそが店のブランド力にほかならない。有名料理人もいなければ、長い伝統もないが、店主の店にかける“思い”はある。その“思い”を明確に打ち出し、お客を惹きつける確固たるブランドを構築することが大切というのである。
土屋 薫(つちや かおる)
株式会社キュアシステムズ代表取締役/集客UP塾 塾長
株式会社タスカル顧問コンサルタント、日経レストラン「悩み解決クリニック」アドバイザーなどを務める。個店・専門店等、中小規模の飲食店の業績アップに数多くの実績を持つ。
集客UP塾⇒http://www.up-juku.jp/












