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犬養裕美子の冒険するレストラン

ピッツァ・マリナーラなどを500円で提供 白金高輪で人気集める本格イタリアン

「タランテッラ・ダ・ルイジ」

2011年5月24日
「タランテッラ・ダ・ルイジ」

タランテッラ・ダ・ルイジ
東京都港区白金3-22-2TEL:03-6408-5552営業時間12:00~14:00L.O.(土日祝のみ)、17:30~23:00L.O.、不定休

近年オフィスや高層マンションが増え、昼夜を問わず人口が増えている注目のエリア、白金高輪。その一角にある物件を見て、一目で気に入ったと話すのは人気のイタリアン「タランテッラ・ダ・ルイジ」の寺床雄一シェフだ。「高い天井、奥に細長い広い空間が、イメージしてきた“食堂”にぴったりだったんです」。

商店街から路地に入り込んだ場所なので、集客に苦労するのは覚悟の上。思い切ってこの2月にオープンした。客数は順調に増えている。理由の一つにサービスメニューがある。ナポリピッツァの代名詞とも言えるマリナーラとスパゲティ・アーリオ・オーリオ・ペペロンチーノ(ニンニクと唐辛子)を、普通メニューと同量にもかかわらず500円で出しているのだ。

寺床シェフは20歳でイタリアへ渡り、ナポリでピッツァ職人として働き始めた。2年修業した後、中部の3ツ星レストランで活躍。再び南部に戻り合計7年をイタリアで過ごした本格派だ。

今の店でもピッツァの粉はナポリの有名店が必ず使うカプート社のものを仕入れ、ナポリの職人が作った薪窯で焼く。小麦粉は通常の3倍近い値段であり、ピッツァなら1枚1500円前後が“適正価格”。それをマリナーラだけ500円にしている。

「マリナーラはトマトソース、ニンニク、バジルを使う最もシンプルなピッツァです。正直、チーズやハムを使うメニューより原価が低い。ナポリでも5ユーロぐらい。だから、皆さんにピッツァのおいしさを知ってもらおうと、この値段にしたのです」。

スパゲティ・アーリオ・オーリオ・ペペロンチーノとピッツァ・マリナーラは、ともに500円

スパゲティ・アーリオ・オーリオ・ペペロンチーノとピッツァ・マリナーラは、ともに500円

スパゲティ・アーリオ・オーリオ・ペペロンチーノも同様だ。ニンニク、唐辛子の材料費は他に比べてぐっと低い。普通なら利益を取りに行くメニューだが、こちらもあえて500円にした。その効果は大きい。初めて来店した客は必ず注文してくれる。二度目はほかのメニューを試してくれる。満腹になるのにお勘定が安いからリピート率が高まる。

これはもちろん、メニュー自体に魅力があるからだ。生地の表面はパリッと、中はモチッと。小麦粉の甘味とトマトの酸味、ニンニクの香ばしさの三位一体となった完成度の高いピッツァだからこそ、お客は満足してくれる。

「日本にまだ紹介されていない南イタリア料理を積極的に紹介したい」と前菜も30種近く揃えている。気軽さとマニアックさ、そして広い間口が、この店の人気を支えている。

犬養裕美子

犬養裕美子(いぬかい・ゆみこ)レストランジャーナリスト。東京を中心に世界の食文化やレストランの最前線をレポート。農林水産省料理人顕彰制度「料理マスターズ」審査委員。飲食施設のアドバイスなども行う

(写真=前田 宗晃)