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犬養裕美子の冒険するレストラン

知多半島料理が楽しめるローカルカフェ 心安らぐ「家庭の味」で東京人にも人気

「ハントコcafe」

2011年7月5日
「ハントコcafe」

ハントコcafe
東京都中央区新富1-4-1TEL:03-6280-5779
営業時間11:30~22:00L.O.(14:30まではランチ、それ以降はカフェタイム、夜は17:30~)、日・祝休

銀座から10分の京橋、新富町はワイン居酒屋、立飲み屋など、流行業態の店が増えている。予算も手頃で気取らない店が多く、わざわざ訪れる人が少なくない。そんなエリアで「個性的」と評判なのが2009年6月にオープンした「ハントコcafe」だ。

「ハントコ」は愛知県知多半島にある半田、常滑(とこなめ)の略。知多半島の食がテーマだ。オーナーは知多半島生まれでシンファ代表の久野義明氏。大学を卒業した後、グローバルダイニングを経て2007年に独立した。

「知多半島は魚や野菜などの食材が豊富で酢や味噌、醤油など発酵調味料が充実している。もっと注目されていいのではと日ごろから思っていました。飲食を通じて故郷に恩返ししたいと思っていたところ、たまたま友人から同郷の女性を紹介されて、この店が実現したんです」。

紹介された同郷の女性とは、この店の店長を務めている久野尚美さんのことだ。

義明氏と偶然にも同姓。飲食業の経験はなかったが、大の料理好きである点を買い、抜擢した。「コンセプトの大枠は私と彼女で考え、細かいメニューは彼女に任せています」。

多幸めし日間賀島産タコと油揚げ、絹さやを散らし、かつおだし、しょうゆであっさりした味付け。1350円

多幸めし日間賀島産タコと油揚げ、絹さやを散らし、かつおだし、しょうゆであっさりした味付け。1350円

メニューブックを飾るのは知多半島料理の数々。蛤(はまぐり)よりも大きな大アサリ500円、日間賀島(ひまかじま)のタコを使った多幸めし(小)1350円、穴子の一夜干し500円、知多牛の味噌煮950円などである。

さらに、酢(豚のオレンジ酢角煮850円)、味噌(きゅうりと3種の甞め味噌650円)、たまり(イカげそきんぴら600円)といった発酵調味料を生かし、尚美さんが創作した料理がズラリと並ぶ。

東京人に、独特の素材や料理になじんでもらう工夫もしている。ランチは食前酢(す)付きにして、宴会には知多半島料理コース3000円を作った。尚美さんの姉、早苗さんもサービスに加わり、素材や食べ方などを聞かれたら即座に答える。家庭的な雰囲気が、店の魅力の1つになっている。

ランチはOL、カフェタイムは近隣の人、夜は一人客からグループ客までと幅広い層に支持され、震災後もすぐに常連客が戻った。久野氏はその理由をこう考える。

「僕らが子供のころから親しんできた家庭の味をそのまま出しているので、誰が食べてもホッとするのではないでしょうか」。

将来に対する不安が広がる今、飲食業に求められているのは、「ホッとする」安心と信頼だろう。人の心を打つのは、やはり、人の心から生まれた思いなのではないか。

犬養裕美子

犬養裕美子(いぬかい・ゆみこ)レストランジャーナリスト。東京を中心に世界の食文化やレストランの最前線をレポート。農林水産省料理人顕彰制度「料理マスターズ」審査委員。飲食施設のアドバイスなども行う

(写真=前田宗晃)