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犬養裕美子の冒険するレストラン

赤坂の外れにできた、隠れ家的な和食店 気取らず楽しめる定番メニューで3回転

「分店 なかむら食堂」

2011年9月13日
「分店 なかむら食堂」

分店 なかむら食堂
東京都港区赤坂6-15-1 TEL:03-5575-0026
営業時間17:30~22:30L.O.日休

飲食店のプロデューサーであり、和食「並木橋なかむら」、「KAN」、そばダイニング「山都」を経営するフェアグランド代表の中村悌二氏が、赤坂に「分店 なかむら食堂」をオープンさせた。震災の影響が残る今、なぜ新店を出す気になったのだろうか。「震災後、飲食業界は大きく変化しました。都心より地元密着型の店がにぎわっている。うちも代々木上原「山都」の成績がいい。外食を控える風潮がある中、選ばれるのはホッとできる店。ここは赤坂といっても中心から外れていて、三等地かもしれないけれど、逆にそこがいい。ここなら、“気取らない食堂”ができると思ったんです」。

入口は目立たない造りだが、店内は見晴らしのいい正方形。50席がゆったり配置されている。キッチンをバンと正面に据えた不思議な造り…と思ったら、何と前は料理教室だったという。壁には何台ものモニターが備えられ、キッチンの手元を映し出したり、ビデオを流したりできる。「日本酒や焼酎の新作プロモーションや食材の紹介など、いろいろ使い道がある。面白い物件でしょう」。

今まで中村氏が手がけてきた店はモノトーンでシンプル、とんがったダイニングスタイルが基本だった。この店では、そうしたこだわりはない。木のテーブルを囲んでワイワイ飲め、一人でも居心地がいい。あくまで食堂らしい雑多な感じが、お客に安心感を与えている。

「分店 なかむら食堂」

リッチなナポリタン(1200円)。カニと生クリームをふんだんに使っているところが“リッチ”。右下:寿司3貫(900円)

刺身、握り寿司、冷やしトマト、じゃこ奴など、オーソドックスな居酒屋メニューが中心。鶏と夏野菜の黒酢炒め、リッチなナポリタン、大人のドライカレーなど、中華や洋食もある。ほとんど1000円以下だ。「『並木橋なかむら』ではきちんと調理して出すのが基本。ここはとうもろこしの茹でたてとか、スイカの切り立てとか、手をかけないものも出す。逆に、それが喜ばれるんです」。

早い時間には食事だけの客が多いのも“食堂” ならでは。無論、家族連れもいれば、サクッと食べて仕事に戻る一人客もいる。中には、ここで夕食を食べて仕事に戻り、仕事を終えて再びここで飲む、というヘビーユーザーも。おかげで営業時間内に3回転するほどの繁盛ぶりだ。

客単価は食事だけなら2000円台、飲んで食べれば5000円前後と激安ではない。しかし、小さなオフィスに勤める人と最近増えたマンションの居住者の両方から、日常使いの店として必要とされている。中村氏の狙った“気取らない食堂”。その夢が赤坂の外れで実現した。

犬養裕美子

犬養裕美子(いぬかい・ゆみこ)レストランジャーナリスト。東京を中心に世界の食文化やレストランの最前線をレポート。農林水産省料理人顕彰制度「料理マスターズ」審査委員。飲食施設のアドバイスなども行う

(写真=前田宗晃)