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犬養裕美子の冒険するレストラン

鮮魚とフルーツをアグロドルチェで楽しむ “大人”が集まる四の橋・南イタリア料理店

2012年1月17日
「ロッツォ・シチリア」

「まぐろのオイル漬け、いちぢくのマルメラータ」(1400円)。シェフが市場で買い付けたまぐろを自家製オイルに漬ける(左写真)

相変わらずイタリア料理店は元気がいい。とりわけ南イタリア料理をテーマとする店の増加は著しい。トマトソースをベースにオレンジの柑橘類やピスタチオなどのナッツ類をアクセントに使う料理が多い南イタリア料理は、日本人が抱く“イタリアらしさ”にあふれる。それが人気の理由だろう。

本格的な南イタリア料理店と言えば石川努シェフを忘れてはならない。東京・西麻布にあった「トラットリア・ベンズィーナ」から2000年に独立。外苑前「トンマジーノ」をオープンし、2006年に渋谷へ移転。「ドンチッチョ」に改名して以来、常に満席を続けている“奇跡の店”だ。この石川氏の元で修業したスタッフたちも次々に独立している。

四の橋に9月10日にオープンした「ロッツォ・シチリア」オーナーの阿部努氏とシェフの中村喜倫氏は「ベンズィーナ」修業時代からの仲間だ。当時から、いずれ二人で独立をしようと決めていたという。

阿部氏は北海道出身。地元の大学を卒業後、森永製菓に務めるも、大学時代のアルバイトで料理に興味を持ち、料理人になろうと決心。「ベンズィーナ」に入ったがサービス担当になった。

「3年頑張ったんですが厨房に入れず、いったん北海道に戻り料理を1年やりました」。石川シェフに請われて東京へ戻るが「ほかのシェフのレベルが高すぎて、料理人としてはとても通用しないことを実感しました」。一方、相棒の中村氏は順調に腕を磨き、シチリアで修業していた。

「ならば料理は中村に任せ、自分はサービスに徹しようと決めました。『ドンチッチョ』は料理はもちろん、スタッフが醸す楽しい空気が人気の理由。そこで過ごす時間にお金を惜しまない大人が常連さんでした」。

「ロッツォ・シチリア」

ロッツォ・シチリア
東京都港区白金1-1-12内野マンション1F
TEL:03-5447-1955 ●営業時間18:00 ~24:00L.O.、日休

「ロッツォ・シチリア」の目指すところも同じ。メインはマグロやアジなど新鮮な魚を季節のフルーツと合わせる“アグロドルチェ(甘酸っぱい)”な味の料理だ。屋台スナック・ひよこ豆のパネッレ(揚げ物)なども揚げたてで提供する。

ワインは阿部氏のセレクトでシチリア中心に40種。店内に並んだ自家製の果実酒も阿部氏の“武器”だ。常連へのサービスや不手際の対応に大活躍という。交通のアクセスはよくないが、飲んで食べて5000円前後と手ごろ。だからこそ“大人の客”が、ここにしかない時間を求めてやってくる。カウンター7席、テーブル16席はいつもにぎわっている。

犬養裕美子

犬養裕美子(いぬかい・ゆみこ)レストランジャーナリスト。東京を中心に世界の食文化やレストランの最前線をレポート。農林水産省料理人顕彰制度「料理マスターズ」審査委員。飲食施設のアドバイスなども行う

(写真=前田宗晃)