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犬養裕美子の冒険するレストラン

白金にオープンした14席のプチレストラン ランチ2100円でプチフールが好きなだけ選べる

ル・クシネ

2012年7月10日
ル・クシネ

クレープシュゼット2000円(2人前)を仕上げる飯塚氏。ブランデーの炎でフランベする。

「個人経営で成り立つのは、小さな店」という考え方はすっかり定着した。業界誌でも、20席以下で、シェフとサービスの2人でやり繰りする店が最も効率が良いと紹介される。最小の資源で最大の利益を上げる工夫はいろいろある。料理は1人でできる品揃えと内容にする。フレンチなら前菜を、切れば出せるパテ類にし、メイン料理は一皿のボリュームを出してお客が2人でシェアできるようにして、作る手間を省く。こんなスタイルのビストロが増えている。

コース料理をフルサービスで楽しむレストランは厳しい状況だが、本格的なサービスの醍醐味を重視した14席のプチレストランが登場した。白金高輪駅から徒歩10数分の「ル・クシネ」だ。フリーのお客が訪れるような場所ではないが、2月のオープン以来着実にお客をつかみ、ランチは2週間先まで満席、夜も予約が取りにくい店になっている。

オーナーの飯塚貢一氏は46歳。ホテルオークラで17年サービスマンを務め、その後、フレンチを数店経験して独立した。「私が永年目標にしてきたのは、きちんとしたサービスでもてなす店を持つこと。少しでもフランス料理のすばらしさを知っていただきたい。個人では小さな店しか出せませんが、それでもきちんとしたサービスにこだわりたかったのです」。その思いが表れているのがワゴンサービスだ。ランチでもディナーでも、ワゴンの上に広がるプチフールを“好きなだけ、何種類でも”選べる。昼は焼き菓子を中心24種、夜はタルトやアイスクリームなども加わる。これでランチは2100円(1200円のランチにはプラス500円)。ディナーは3600円である。にわかには信じられない値段と内容だ。

厨房は2人。佐々木翼シェフは「最初は大変でしたけど、これを楽しみに来るお客様がほとんどなので、やりがいがあります」と、毎日少量ずつ仕込みをして負担を軽減している。加えて飯塚氏が客席の横で作るクレープシュゼット(2人分2000円)も、その華麗なパフォーマンスがリピーターの間で人気だ。オーダーがあると店中が注目し、別のテーブルからもオーダーが来る。安さだけを売り物とせず、特別感のあるサービスを前面に出せば、お客は興味を持つ。飯塚氏のサービスのプロの原点に立ち返った店づくりは、小さくても本格的なサービスの店に可能性があることを証明している。

ル・クシネ

できたてのデセールは香りが違う!(左)。ほとんどの人が「全部!」と、希望するプチフールも人気(右)

店舗DATA「ル・クシネ」東京都港区白金5-10-10TEL:03-6408-915511:30~14:00L.O.、18:00~21:30L.O. 水曜休

犬養裕美子

犬養裕美子(いぬかい・ゆみこ)レストランジャーナリスト。東京を中心に世界の食文化やレストランの最前線をレポート。農林水産省料理人顕彰制度「料理マスターズ」審査委員。飲食施設のアドバイスなども行う

(写真=前田宗晃)