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犬養裕美子の冒険するレストラン

新宿荒木町にオープンした甲殻料理の店 新鮮素材をバラエティー豊かなメニューで楽しめる

うぶか

2012年8月7日
うぶか

日本料理とひと口に言っても、京料理、浪花割烹、江戸会席など、土地柄と業態を表す言い方が多数あり、その幅は広い。高級で格式高いイメージがある一方で、それが故に、今どきの料理人たちが日本料理に親しみにくくなっているのでは、とも思う。

そんな中、“甲殻料理”を看板に掲げる日本料理店が5月22日にオープンした。活気が戻ってきた荒木町に店を構えた「うぶか」だ。店主の加藤邦彦さんは35歳。「子供のころからカニやエビが好きで、独立するなら個性的な店にしたいと、カニとエビを使った料理をコース仕立てで楽しんでもらえる店にしました」。

18歳で仙台のカニ専門店に入店。「きちんとした板前になりたいなら京都に行くべきだ」と勧められて京都で4年修業。その後、ニュージーランドで天然のエビや水晶エビなどを扱う日本料理店で2年半働いた。

帰国して日本料理店に戻る予定だったが、友人の中国料理店を手伝って2年働き、中国の素材や技術について学んだ。それが、この店のメニューに生かされている。

夜の基本コースは7700円で、6月は先付(夏野菜の冷やし煮物と干しエビ春雨 ナッツの香り)、前菜(車エビのビスク、北海道産毛ガニのメルバトースト、トリュフ、千葉産有機ズッキーニの揚げびたし)、向付(ほうぼう、ボタンエビ)、一品(才巻きエビの握り 黒酢のシャリで)、椀物(赤車エビのそば豆腐)、揚物(エビフライ自家製タルタルソース)、一品(ダシ巻き玉子 海老玉子ダシ)、食事(炊き込みご飯、赤だし、香の物)、水物といった構成。5800円のコースは椀物と一品が1つずつ減る。注目はエビフライだ。車エビのエビ味噌を取り出して冷凍し、それをオブラートに包み、さらにワンタンの皮に包んで、身と一緒に衣をつけ、揚げてある。エビフライ1本に対してエビ味噌は2本分。エビカニ好きにはたまらない濃厚さだ。

ランチはエビ天丼1000円のみ、しかも10食限定だ。エビ天3尾に野菜天ぷらも大盛りだ。「サクッと揚げたてを食べてほしい」と天つゆをかけずに、塩とピリ辛のべっこうあんを用意している。これを好きなようにかけて食べるのだが、エビの甘味を引き出していると好評だ。

日本料理店という確立されたジャンルに甘んじず、甲殻料理という明確なコンセプトを打ち出した加藤氏。そのストレートな思いは見事に開花。対象を絞ったことで、料理をより深く追求できている。

季節ごとにどんな甲殻料理が登場するか。今後が楽しみだ。

うぶか

エビフライは夜のコースの定番メニューで、パン粉を店主が自ら細かくひいた自家製だ。ランチのエビ天丼は1000円。丼つゆは先にかけてある

店舗DATAうぶか東京都新宿区荒木町2-14 TEL:03-3356-7270 12:00~13:00L.O.(売り切れじまい)、18:00~23:30L.O.,日・祝休

犬養裕美子

犬養裕美子(いぬかい・ゆみこ)レストランジャーナリスト。東京を中心に世界の食文化やレストランの最前線をレポート。農林水産省料理人顕彰制度「料理マスターズ」審査委員。飲食施設のアドバイスなども行う

(写真=前田宗晃)