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犬養裕美子の冒険するレストラン

「居酒屋やまちゃん」のスタイルを受け継ぎ 7月にオープンした、「予約が取れない居酒屋」

居酒屋 純ちゃん

2012年10月9日
純ちゃん

キンキの煮付け(1匹2人前で約1500円のオプション)とコースで出る炭火焼2種のうちの1つ、時シラズ。

居酒屋「純ちゃん」店主、小田島純幸さんは以前、アパレル会社に勤務していた。「ファッション業界は活気があって面白い。ただ、自分にはもっと違う道があるかなと考え始めて……」。何ができるかと考えた時に、「飲食の道」があった。

それまでにも月に1回、知人を集めて料理と酒を楽しむプライベートな会を開いていた。「みんなでおいしいものを囲む、楽しい空間を提供することにやりがいを感じていました」。3年続けた料理の会は趣味に終わらず、その延長線上に、今の店がある。

新しい道へ進む第一歩として、築地の水産会社に入って魚を学んだ。どんな業態がいいかを模索している時、「居酒屋やまちゃん」を知った。「これだ!と思いました。自分一人で営業するつもりでしたので、まさにその通りの業態。1年先まで予約でいっぱいというのもすごいと思った。ここで勉強させてもらおうと考えていたら、もう店を閉めるんだと聞いて、少しの期間でいいからとお願いし、入店しました」。

「居酒屋やまちゃん」は一組10人で貸切の予約制。料理はお任せ、日本酒、ビールが飲み放題で一人5800円という明朗会計だった。魚と日本酒。おいしいものを食べて、日本酒を楽しみたい人なら絶対に満足する内容。小田島さんも同じスタイルでやろうと決めていたが、ひょんなことから、店そのものも譲り受けることになった。

7月に「純ちゃん」として開店。最初は、以前のお客が予約の中心だったが、8月以降はブログで空き状況を知らせ、予約を受けるようにした。「一人ですべてをやっているので、電話で応対できないこともあるからです」。8月は3回予約を受け付けて、すべて瞬時に埋まってしまった。

料理は日によって違う。ある日は山盛りの甘えびでスタート。白イカとイサキの炙りのお造り、大アサリの酒蒸し、稚鮎の天ぷら、スズキの炭火焼、自家製豆腐、時シラズの炭火焼、ハモ鍋に雑炊か、土鍋ご飯というメニューだった。旬の魚がたっぷりだ。「アワビ、ウニ、キンキなどの特別素材も用意しています。お客様に満足してもらうため、ほとんど原価でお出ししています」。これが「純ちゃん」の大きな特徴。お客が小田島さんに信頼と期待を寄せるゆえんだ。

サービスに徹することで、結果的にお客のリピート率を高める。小さい店にとっては、それが鉄壁のセオリーとなる。

純ちゃん

風情あるカウンター

犬養裕美子

犬養裕美子(いぬかい・ゆみこ)レストランジャーナリスト。東京を中心に世界の食文化やレストランの最前線をレポート。農林水産省料理人顕彰制度「料理マスターズ」審査委員。飲食施設のアドバイスなども行う

店舗DATA:居酒屋 純ちゃん東京都新宿区荒木町6-9TEL:03-6457-796019:00~22:30、完全予約制(10~16人)、日祝休Webサイトhttp://ameblo.jp/izakaya-junchan

(写真=前田宗晃)