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犬養裕美子の冒険するレストラン

“谷根千”の真ん中にできた中国料理店 素朴な中国風おやきなどが地元のお客に人気

安暖亭(あんだんて)

2012年11月13日
安暖亭(あんだんて)

手前から上に、水餃子8個680円、おやき(野菜)1個130円、(ねぎ)130円。なお、おやきはテイクアウト販売のみ

休日ともなると散歩エリアとしてにぎわいをみせる“谷根千(やねせん)”。その中心にある根津一丁目交差点に8月にオープンしたのが「安暖亭(あんだんて)」だ。「アンダンテ」は「歩くような早さで」という音楽用語である。この不思議な店名と、扉や窓から中が見えにくい造りのため何の店かわかりにくいが、実は中国料理店なのだ。このギャップが地元客の興味を引き、ランチやテイクアウトコーナーからお客が増え始めた。

オーナー石丸陽二郎さんの元の職場は化学プラントの設計会社だ。「10年ほど前に上海で食べた焼小籠包のおいしさに感激して、これを日本で出したら売れると思ったことが出発点でした」。退職後、たまたま知り合いから上海・広東料理を得意とする謝春興氏を紹介され、さらに在日20年で日本語の堪能な黄世芳さんが通訳兼ホールを担当してくれることになり、店を出すことを決めた。

物件は最初から谷根千周辺で探していた。「この辺ののんびりした空気が好きで、店を出すならこのエリアと思っていました」。

木造の古い長屋の1階にあった下駄屋と喫茶店、2軒分を1つにしてリノベーションした。石丸さんがデザイナーに、あえて「中国料理店らしくない内装に」とオーダーしたところ白一色になった。シンプルで清潔感があり、おしゃれなイメージだ。

料理は謝さん、点心師の邱素敏さんという中国人2人で作る。謝さんは日本でも15年のキャリアがあり、日本人の好みを心得ている。一方の邱さんは水餃子や小籠包、中国風おやきなどを担当する。日本のおやきは蒸して作るが、中国では焼いてから揚げる点が面白い。野菜130円、ねぎ130円など、まさにスナック感覚だ。テイクアウト販売だけだが、近所の人から5個、10個とまとめて注文が入っている。

この厨房の2人を束ねているのが黄さんだ。流暢な日本語で料理の説明をし、お客を丁寧に案内する。彼女の気持ちのいいサービスはこの店の売り物になっている。

「謝さんの料理はとてもおいしいけど、1つ問題があります。盛り付けの感覚が中国のままで、ものすごくボリュームがある。2人客が来ても、シェアすれば十分、となってあまり儲からないね(笑)」。

石丸さんは現在、創業のきっかけとなった焼小籠包を店で出すべく、開発中だ。「寒くなるころには出します」。急がず、焦らず。「安暖亭」はアンダンテで頑張っている。

安暖亭(あんだんて)

白一色のシンプルな店内

犬養裕美子

犬養裕美子(いぬかい・ゆみこ)レストランジャーナリスト。東京を中心に世界の食文化やレストランの最前線をレポート。農林水産省料理人顕彰制度「料理マスターズ」審査委員。飲食施設のアドバイスなども行う

店舗DATA安暖亭(あんだんて)東京都文京区根津2-19-3TEL:03-3823-5558ランチ11:30~14:30L.O.、ディナー17:00~22:30L.O.、火休

(写真=前田宗晃)