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犬養裕美子の冒険するレストラン

とんかつ激戦区、神田エリアに現れた新星 迫力ある“特ヒレ丸ごと1本”が話題に

ポンチ軒

2012年12月11日
ポンチ軒

ミックスフライ定食(1920円)。海老フライ、海鮮クリームコロッケ、ひと口ヒレカツ、本日のフライ(カキ)が付く。

日本では明治期に肉食が解禁になり、独自の肉料理が発達してきた。とんかつもその1つ。原型はイギリス料理「仔牛のコートレット」とも言われる。豚肉に衣をつけて揚げたとんかつはご飯に合う日本の洋食だ。

そんなとんかつ専門店が多いのが上野、神田周辺。そこに今年5月、「ポンチ軒」がオープンした。前身は「旬香亭」の斉藤元志郎シェフが経営する揚げ物と洋食の店・赤坂「フリッツ」だ。斉藤シェフは出身地の静岡へ戻り「ポンチ軒by旬香亭」で腕を振るい、「フリッツ」はとんかつ・豚しゃぶの店として神田小川町に移転した、というわけだ。店があるのは、以前もとんかつ店だったという物件。レトロな雰囲気をそのまま残し、カウンター6席、テーブル14席というレイアウトである。

「旬香亭」で修業した橋本正幸さんが店長を務める。「ここに移った時に今までの揚げ方を少し変えました。今までは低温で揚げていましたが、ここでは最後に中温で揚げて、最後に油をよく切って仕上げます」。

今の時代、とんかつも“あっさり”とした味が好まれるという。そのため揚げ油そのものもコクのあるラードではなく、ゴマ油とサラダ油をブレンド。使用している豚はロース、ヒレとも沖縄寿豚だ。やわらかく、肉そのものに旨味があるので最初はそのままで、次にゲランドの塩、ソース2種(愛知県のスーパー太陽ソースと、オリジナルブレンドのとんかつソース)、柚子コショウ、七味などで変化のある味を楽しめる。「ちょこっとカレー」(300円)もあり、好きに味を足せる。

「以前は脂身の旨さを味わうロースが人気でしたが、最近はヒレが注目されています。メニューには載せていない、特別なヒレがあるんです」。それが「特ヒレ丸ごと1本 沖縄寿豚」である。

ヒレ1本500gを低温で約20分、余熱で10分、合計30分かけて揚げる。30センチメートル近い大皿でサービスされるとテーブルがワッと盛り上がる。「4200円とけっこう高額なので、最初は売れないかもしれないと心配で壁に張り紙を出していただけでした。が、逆にこれが名物になりました」。初めて来る客は、一人では食べきれない量、値段に躊躇するが、それゆえぜひ食べてみたいと人を誘って来るのだという。

価格で競うのではなく内容で差別化する。女性グループ客、気楽な接待などの利用が多いのも、この店ならではである。

ポンチ軒

雰囲気のある店内

犬養裕美子

犬養裕美子(いぬかい・ゆみこ)レストランジャーナリスト。東京を中心に世界の食文化やレストランの最前線をレポート。農林水産省料理人顕彰制度「料理マスターズ」審査委員。飲食施設のアドバイスなども行う

店舗DATAポンチ軒東京都千代田区神田小川町2-8TEL:03-3293-211011:15~14:30L.O.、17:30~21:30L.O.、日曜休