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犬養裕美子の冒険するレストラン

麹町にオープンしたオシャレな“チリ”専門店 パンやコーヒーなどの脇役までおいしいと話題に

チリパーラーナイン

2013年3月5日
チリパーラーナイン

チリ・スタンダード(牛肉)950円と、ホットドッグ“ポチ”550円

「チリパーラーナイン」オーナーの松浦清一郎さんと亜季さんが麹町に、初めての自分の店であるサンドイッチ店を出したのは10年前。当時は日本テレビとその関連会社が移転し、オフィス街としての将来が見えないエリアだったが、その代わりにマンションは増えた。「青山や白金のような華やかさはないけれど、僕らにとっては好ましかったんです」と松浦氏は言う。

松浦氏は海外生活を経た後、25歳で独立。サンドイッチ店を開いたが、3年後に立ち退くことになり、紹介されたのは100m2の物件。「これならワインや料理も出せる。冒険だとは思いましたが業態を広げました」。それが「麹町カフェ」だ。おしゃれで使い勝手のいいカフェとして評判になり、地元だけでなく皇居周辺のランナーなどが立ち寄るようになった。

さらに3年後には靖国神社前に天然酵母パンショップ「ファクトリー」をオープン。イートインも充実させ、パンブームに乗って一日中大にぎわいになった。そして昨年10月、「ファクトリー」のすぐ裏手にオープンしたのが「チリパーラーナイン」だ。“チリ”とは豆と牛肉、野菜の煮込み料理のことである。

レシピは亜希さんとスタッフが考えている。「麹町カフェでも人気なので、いつかチリを広める店をやりたいと思っていました」。ここのチリがほかと違うのは、オーストラリア産放牧牛を手でカットして、粗めのひき肉にして一度炒め、余分な油を捨ててから煮込んでいる。そのため、驚くほど後味があっさりなのだ。

チリはスタンダードな牛肉と野菜のみだが、日替わりの豆料理も用意する。薬味にタマネギ、香菜、サワークリーム、チェダーチーズなどをプラスして自分なりの味にできるのもいい。チリ用に特別に焼かれたコーンブレッドもおいしいが、ご飯(白米と玄米が3:1)が選べる点が男性客に人気だ。

豆はヘルシーだが、地味な存在だ。それを主役にして成功している理由はハンドドリップのコーヒーがおいしく、ユニークなホットドッグが4種類あるなど、脇役が充実しているから。先行した2店の成功体験がうまく生かされている。「将来は自分たちの農園で作った野菜をできるだけ使いたいですね」と亜季さんは話す。実際、山梨県にある自社の畑で収穫した豆を使ったこともある。そこから発想した次なる業態も、あり得るかもしれない。

チリパーラーナイン

オシャレな店内

店舗DATAチリパーラーナイン東京都千代田区九段南3-7-12 九段津田ビル1FTEL:03-3234-2309月~金8:00~20:00、土9:00~18:00、日休

犬養裕美子

犬養裕美子(いぬかい・ゆみこ)レストランジャーナリスト。東京を中心に世界の食文化やレストランの最前線をレポート。農林水産省料理人顕彰制度「料理マスターズ」審査委員。飲食施設のアドバイスなども行う