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犬養裕美子の冒険するレストラン

ベトナム料理店の次は小さな屋台村 さらに広がる女性オーナーの大きな夢

エコダ・ヘム

2013年5月14日
エコダ・ヘム

手前左から逆時計回りに、バインミー450円、薄焼き卵で巻いた生春巻き250円、鶏のお粥700円、ビール500円(メニューは季節ごとに替わる)

東京・池袋から電車で10分。江古田は庶民的な大学の街であり、住宅街だ。その江古田商店街の外れにあるベトナム屋台料理「マイマイ」は誰もが足を止める、木造トタン張りの一軒家。オーナーの足立由美子さんは、中南米食文化を研究中、ベトナムに興味を持った。現地の料理教室に通い、すっかりその魅力の虜に。

「お酒はもちろん、ご飯にも合う味。現地の食堂はおかずがずらりと並び、日本の昔の定食屋のよう」

その店を目標に、15年前、雑貨店をオープン。徐々に料理を出し、8年前に念願の食堂に。ほどなく日本にフォーや生春巻などベトナム料理のブームはやってくるが、足立さんは、あくまで酒とつまみ、おかずとご飯の組み合わせのメニューに工夫を凝らした。1年後の夏から季節限定でチェー(ベトナムの氷ぜんざい)のカフェを併設したり、4年前にはバインミー(ベトナム風サンドイッチ)を定番メニューにしたり。いずれもベトナムではポピュラーだが、彼女が紹介するとたちまち人気アイテムとして他店でもはやる。

そんな足立さんが今年1月、3軒隣に新しい店舗を開いた。それが「エコダ・ヘム」。ヘムとは路地のことで、小さな中庭を囲み、3つの店が並んでいる。この3店舗はそれぞれ、赤が麺、青はご飯物、黄色がバインミーやつまみ、飲み物などを提供。「実はこの場所は、商売していた両親が引退するので、自由に使っていいと許可されて実現したんです」(足立さん)。

建物は少しでも安く仕上げるため、高崎の屋台村で見つけたコンテナを利用している。それぞれカウンター7席にキッチンがある。「別々に仕込みも料理もできる。例えば北のハノイ、中部のフエ、南のホーチミンの料理をそれぞれの店で出すイベントもできる。この小ささが逆に使いやすい」。料理教室やライブなど様々なイベントを計画中で、貸し切りパーティーの申し込みもある。

もともと足立さんの店は女性スタッフが中心。主婦もいるので無理なローテーションは組まない。平日は夜のみ、週末は昼夜、週休2日。だから「マイマイ」の息は長く、スタッフも育った。「働きたい女性はたくさんいます。一人ひとりの働き方を理解してあげれば長続きする」。今後はそんな女性のネットワークを作り、総菜店を始めたり、このスペースを地域の人のイベントに使ってもらったりすることも考えているという。足立さんの夢はゆっくりだが、確実に実現している。

エコダ・ヘム
犬養裕美子

犬養裕美子(いぬかい・ゆみこ)レストランジャーナリスト。東京を中心に世界の食文化やレストランの最前線をレポート。農林水産省料理人顕彰制度「料理マスターズ」審査委員。飲食施設のアドバイスなども行う

店舗DATAエコダ・ヘム 東京都練馬区旭丘1-74-9 TEL:03-3953-0021営業時間/月木金17:00~21:30L.O.、土日祝12:00~14:30L.O.、17:00~21:00L.O.、火水休

(写真=前田宗晃)