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犬養裕美子の冒険するレストラン

ナショナルブランドの次なる展開は ライブ感が伝わる“楽しませる料理”

キハチ 青山本店

2013年7月9日

「仔羊肉の包み焼き 香草たっぷりのカフェ・ド・パリ バター風味」(2310円)。アツアツのパンを切り分けると、中から肉が出てくる。ソースをかけて、パンと一緒に食べる

「キハチ」といえば、日本のレストランビジネスの中でトップを走り続けてきたおなじみのブランド。その青山本店が4月2日、外苑並木通りにオープンした。“BY THE KITCHEN”をコンセプトとして、キッチンを中心にレストランフロアを構成。1階はキッチンとダイニングフロアの間に仕切りを作らず、臨場感がそのまま伝わる空間になっている。シェフズカウンターではシェフの隣で食事をしているようなライブ感を味わえる。2階にはオープンキッチンカウンターがあり、ここでもシェフとの会話を楽しめる落ち着いた雰囲気だ。

「キハチ」の創業は1987年。熊谷喜八シェフが掲げた「キハチ流無国籍料理」は、フレンチの技法をベースに、素材を自由に組み合わせ、スパイスや調味料も変幻自在に使ったクリエーティブ料理。フランス料理至上主義全盛だった時代にあって、熊谷シェフはあえて無国籍料理で自分らしさをアピールした。現在のトップレストランがこぞって“自分の料理はジャンルにこだわらない料理だ”と主張していることを考えると、感慨深い。

現在、現場を仕切るのは熊谷シェフと仕事をして30年の鈴木眞雄シェフ。「包み焼き」という技法と「目の前で仕上げる」動きのあるサービスを2本の柱にしている。「普通は包み焼きに使われる生地を捨ててしまうんですが、肉を包んで焼くと、その味が染み込んでおいしいのではと考えていました」。どうせなら生地も食べられるようにしようとフォカッチャの生地を工夫し、“パン生地も食べられる包み焼き”を考案した。

また、「タラバ蟹とアボカド、グレープフルーツのカリフォルニア風サラダ」(2520円)は熊谷シェフのロングセラーメニュー。2~3人でシェアするボリュームを、サービススタッフがテーブルで仕上げる。その手さばきも見ているだけで楽しくなる。

外苑銀杏並木という立地にテラス席が1階は64席、2階は28席あるのも強み。全246席という大箱だが、開店2カ月でランチは満席、夜も予約でにぎわうようになったという。リピーターが増えている理由は、やはり人ではないだろうか。料理人がすぐ身近で真剣に作っている。その様子が見え、その気配を感じられる。

私自身もここに来ると、厨房の鈴木シェフをはじめ、10人近くの料理人が真剣に働く姿に感謝したくなる。これだけ長く愛される理由は、やはりその真摯な姿勢にあるのだと思う。

1階は、気軽にグループ利用できる造りになっている(写真)。2階は、落ち着いた会食に適している

犬養裕美子

犬養裕美子(いぬかい・ゆみこ)レストランジャーナリスト。東京を中心に世界の食文化やレストランの最前線をレポート。農林水産省料理人顕彰制度「料理マスターズ」審査委員。飲食施設のアドバイスなども行う

店舗DATAキハチ 青山本店東京都港区北青山2-1-19 TEL:03-5785-3641営業時間/1階は11:30~14:30、14:30~17:30(L.O.17:00、ティータイム)、月~土18:00~23:00(L.O.21:30)、日祝18:00~22:00(L.O.20:30)、2階は11:30~16:00(L.O.14:30)、月~土18:00~23:00(L.O.21:00)、日祝18:00~22:00(L.O.20:00)、年末年始休

(写真=前田宗晃)