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犬養裕美子の冒険するレストラン

スタートは現実の自分たちを見つめることから ディアログ(対話)を交わしながら前進

ディアログ

2013年8月20日

赤い野菜とクスクスのサラダはビーツ、赤ピーマン、トマト。緑の野菜はキュウリ、ブロッコリーなど。各750円

5月のオープンから3カ月。シェフの好井祐輔氏とサービスの下川亮平氏の2人で始めたビストロ&ワインバーはゆっくりと発進したばかり。場所は下北沢駅と東北沢駅の間。どちらの駅からも徒歩10分近くかかる難しい立地だ。「ようやく付近にお住まいの方も寄ってくださるようになりました」と下川氏。

平日はカップル、週末は家族連れや年配の夫婦など。たった2人で23席を見るが、意外にサクサクさばく。その秘密はメニュー構成にあった。アントレ(前菜)、プラ(メーン)、デザート、チーズのシンプルな構成。しかもメーンに魚がない。「前菜でホタテやエビを使いますが、メーンに魚を使うのはやはりリスクが大きい。お客様の要望もあり、店が安定すればもちろん出したいですけど。今は前菜と肉料理をきちんと出すことに全力を注ぎたい」と好井シェフ。

しかし、魚料理がないことが気にならないほど、前菜の野菜料理は魅力的だ。ある日のメニューは500円から1250円までと安く、しかも幅広い。「いろどり野菜の温かいサラダ」(1250円)は、フレンチらしい、バターの風味も香るリッチな一皿。「赤い野菜とクスクスのサラダ」(750円)、「緑の野菜とクスクスのサラダ」(750円)は色と味がリンクした優秀メニュー。クスクス(小粒のパスタ)がソースを吸って、食べ応えもある。

「チーズのオムレツとアンディーブのサラダ」(1000円)や、「ブルーチーズのブランマンジェと帆立のサラダ」(950円)は2人でシェアするのに十分なボリュームだ。「田舎風パテ」(1000円)や「グリル野菜のテリーヌ」(950円)などクイックメニューもある。「盛り付けを2人でやらなくちゃいけないこともありますが、お客さんはワインを飲みながら待ってくださいます」(下川氏)。2人の息がぴったりなのも当然。京橋のフレンチ「カストール」の元同僚だったのだ。

最近、景気が戻ってきたせいか、急いでオープンする店をよく見る。残念なのは、無理して完璧を取り繕っていること。スタッフも十分でないのに、実力以上のメニューを作ろうとする。安易な気持ちでスタートすると、必ず行き詰まる。それでも、品数を減らすなど修正すればいいが、忙しさを理由に対応策を考えない。本当に大切なのは、背伸びをしない、言い訳をしないこと。「ディアログ」は一歩目を慎重に踏み出し、お客の反応もよくつかんでいる。魚料理を出す日も、そう遠くはないはず。生まれたばかりの店はそうやって“いい店”に成長するのだと思う。

グラスワインは700円から。ビオ、自然派などこだわらずにそろえる

犬養裕美子

犬養裕美子(いぬかい・ゆみこ)レストランジャーナリスト。東京を中心に世界の食文化やレストランの最前線をレポート。農林水産省料理人顕彰制度「料理マスターズ」審査委員。飲食施設のアドバイスなども行う

店舗DATAディアログ東京都世田谷区北沢3-23-21 TEL:03-6804-8820営業時間/18:00~24:00L.O.、火休

(写真=前田宗晃)