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犬養裕美子の冒険するレストラン

宮廷料理からピデ(ピッツァ)まで トルコ料理の奥深い魅力を伝え続ける

ブルガズ・アダ・カフェ

2013年9月10日
ブルガズ・アダ・カフェ

手前がピッツァの原型と言われるピデ。2人でシェアできる量で1800円。ゴマとペクメズ(ブドウの発酵菌)で発酵させたパンは1個280円で、クリームチーズや松のはちみつなどは180円~、ディップ4種類で1600円

トルコ料理は、スパイスや香辛料があまり強くなく、男女を問わず人気がある。最近はドネルケバブ(牛肉や羊肉を重ねて焼く)の屋台も珍しくなくなった。「ドネルケバブはアラブから近年伝わったもの。昔からあるものではありません。トルコ料理の代表的な料理は“ピラウ”。つまり、お米料理です」と、トルコ料理の解説に熱くなるのが、東京・麻布十番「ブルガズ・アダ」シェフのメフメット・ディキメン氏。彼が作るのは、14世紀から20世紀初頭のオスマントルコ帝国時代の宮廷料理。今では連日満席の人気店だが、2008年にマダムの裕子さんと店を開けるときは覚悟を決めてのことだった。

「私の実家がある長野県飯田市で10年やってきたんですが、田舎ではトルコ料理自体が知られていないので経営が成り立たない。でもシェフの料理は本当に素晴らしいんです。それを知ってもらいたい一心で東京に出ることにしました」(裕子さん)

半年ほど経って、クチコミや雑誌、インターネットで紹介されるとたちまち話題に。「トルコ大使館や関係企業の方だけでなく、シェフの料理を理解してくれる方が来てくださったことが本当にうれしい」。

成功のカギは2つ。第一はディキメン氏の常に謙虚な姿勢。料理に関して必ず意見を聞く。それをきちんと心に留め、修正すべき点は修正する。彼の口ぐせは「勉強になります!」。第二は、シェフの料理の一番の理解者である裕子さんのプロフェッショナルなサービス。トルコ料理を知ってもらうには、ほんの小さなことでも説明しなくては興味を持ってもらえない。砂糖ではなく果物で甘味を加える、パンはミルクで練るから甘くておいしいなど、その都度説明する根気強さが、トルコ料理初心者には頼もしく思えるのだ。

8月には新店を赤坂にオープンした。麻布十番はコース主体だが、こちらはアラカルト。ピデ(トルコ風ピッツァ)やシミット(トルコ風ベーグル)など、簡単な食事とお茶やアルコールを楽しめる。ここでは、娘の麻歩さんが店長を務める。

このエリアはオフィスもあるが、最近はマンションが増えた。「周辺にお菓子屋さんもパン屋さんもないので、テイクアウトの需要はあると思います。今は値段、ボリュームを見直しています」(麻歩さん)。焦らず、マイペース。この店が人を呼ぶ理由は、地道だが堅実。すでに週に4回以上通うトルコ人の常連がいることが、その味を証明している。

ブルガズ・アダ・カフェ

犬養裕美子

犬養裕美子(いぬかい・ゆみこ)レストランジャーナリスト。東京を中心に世界の食文化やレストランの最前線をレポート。農林水産省料理人顕彰制度「料理マスターズ」審査委員。飲食施設のアドバイスなども行う

店舗DATAブルガズ・アダ・カフェブルガズ・アダ・カフェ 東京都港区赤坂6-12-11 赤坂甲陽ビル1F TEL:03-6277-6907営業時間/12:00~23:00(14:00~17:00はティータイム)、日休

(写真=前田宗晃)