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犬養裕美子の冒険するレストラン

決して派手ではないけれど 今、求められる若手割烹の形

はらまさ

2013年11月12日
はらまさ

店主の原正太郎氏

アベノミクス効果、2020年東京オリンピック開催決定など、2013年後半はそこそこ明るい未来が見えてきた。飲食業界も新店ラッシュ、高額店も増えている。といっても、個人店はまだまだ厳しい状況。じっくり、ゆっくり歩を進めるしかない。今年1月、東京・曙橋に開店した「はらまさ」も、オープンして10カ月、ようやく軌道に乗ってきた。

店主の原正太郎氏は32歳。19歳から大阪、キタ新地の日本料理店で6年修業。その後、東京で7年修業して独立した。今、エリアとして盛り上がっている荒木町は目と鼻の先。「たくさんの店の中に埋もれるよりは、自分はマイペースでやりたくて、この場所を選びました」というだけあって、ふりの客は望めない。しかし、そこに2人雇って城を構えた。そして最初の3カ月で「2人も雇っている場合じゃない」状況になり、サービスも料理も1人でやることにした。とにかく、リーズナブルな値段で客を待った。ランチ定食1000円、夜はコース5000円、7000円、1万円にアラカルトでもOK。この値段設定が幅広い年齢層の興味を引いた。20~30代は5000円、年配客は7000円の注文が多く、酒を飲んで1人1万円弱。5000円のコースで先付、白身のお造り、お椀、一品、土鍋ご飯かうどん、あんは自家製と手間をかけた甘味、という充実した内容。常連客にはアラカルトが好評で、ベストスリーは「カニの茶碗蒸し」850円、「カラスミと大根」650円、「なっぱとお揚げさん」650円。いずれも酒のつまみになる一品だ。

またランチは10食限定だが、最近は予約で売り切れになる。1000円では儲けがなく、実際は閉めて夜の仕込みをした方が楽なはずだが、地元客を大事にするのは基本だという。「夜も夏頃からようやく、一度来た方のリピートや人への紹介で広がってきました」。

今、日本料理店は難しい業種だと思う。接待での利用が減り、自腹で利用する客相手。以前のように高額なコースは設定できない。しかし、サービスや器を含めてこそ日本料理の良さが伝わる。原氏は器にも自分ならではのこだわりがある。それが器好きにも喜ばれている。

何もかも1人でやるから、一貫した「おもてなし」が実現する。これが若手割烹の生きる道かもしれない。

はらまさ

「黒トリュフご飯」(左)は、今はサービスとして7000円以上のコースで楽しめる。「季節の野菜の一皿」(右)は800円。和食店には少ない野菜料理を欠かさないのも女性客に人気の理由

犬養裕美子

犬養裕美子(いぬかい・ゆみこ)レストランジャーナリスト。東京を中心に世界の食文化やレストランの最前線をレポート。農林水産省料理人顕彰制度「料理マスターズ」審査委員。飲食施設のアドバイスなども行う

店舗DATA:はらまさ東京都新宿区片町2-2 TEL:03-5312-7307営業時間/ 11:30~ 14:00(売り切れ終了)、18:00~24:00、日祝休(予約応相談)席数/12席