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犬養裕美子の冒険するレストラン

インテリアや器も選び抜き 本物の日本料理をパリから世界へ

「OKUDA」パリ店

2013年12月10日
「OKUDA」パリ店

奥田透氏は、銀座「小十」「奥田」と同じ雰囲気を、パリでも再現した

「和食 日本人の伝統的な食文化」がユネスコ無形文化遺産に正式に登録される見通しだ。寿司や天ぷらなど単品だけでなく、日本食や食文化への興味が世界で高まることが期待される。しかし、日本料理店の現場は決して将来を楽観視できない。人材不足や素材の高騰、器や備品のコストなど経費がかかり、「本物」を出し続けるには、日本食や食文化に共感するお客があってこそ成り立つ。

銀座「小十」の店主・奥田透氏は「日本料理の本当の良さを理解していただかないと、いつか消えてしまう」という危機感を常に抱き続けてきた。自身の店は2007年にミシュラン三ツ星を獲得、10年には「鮨かくとう」開店。11年には銀座五丁目に「銀座奥田」を開店し、すぐにミシュラン二ツ星を得た。まさに“破竹の勢い”。そして、13年9月26日には、ついに海外初「OKUDA」パリ店をオープンさせた。これこそ、奥田氏が挑戦する“パリで本物の日本料理を発信していく”ステージだ。

場所はパリの高級ブティック街の一角、トレムワイユ通り。角地の入り口を入ると、和服姿の女性スタッフが出迎えてくれる。その自然な応対は、まるで“銀座”にいるよう。1階はカウンター7席と洋室の個室(4席)、地下にはテーブル8席と和室の個室(4席)がある。繊細な細工の戸棚や土壁などは、日本から職人を呼んで仕上げた。

料理は昼180ユーロ(約2万4000円、11月上旬時点)、夜250ユーロ(約3万3000円)のコースのみ。この値段はもちろん三ツ星クラス。ブルターニュ産オマールと彩り野菜のわさび和え、きのこの茶わん蒸し、鯛のお椀、お造り、焼き物、牛の炭火焼き、炊き込みご飯と汁物、香の物、デザート。季節の素材を現地で手に入れ、大胆に料理する。ただ「残念ながら、魚は日本と同じレベルとは言えない。これからもっと探したい」と、日本料理を表現する魚に課題あり。

現場の料理長は、「銀座奥田」でもオープンから料理長を務めた宮原瞬氏。慣れない英語とはいえ、カウンター越しに堂々と接客する様子は頼もしく見える。パリでいくつ星が付くのか? 奥田氏の挑戦の行方は?

「OKUDA」パリ店

コース料理の品々は、左からブルターニュ産オマールと彩り野菜のわさび和え、お造り、炊き込みご飯と汁物(右)

犬養裕美子

犬養裕美子(いぬかい・ゆみこ)レストランジャーナリスト。東京を中心に世界の食文化やレストランの最前線をレポート。農林水産省料理人顕彰制度「料理マスターズ」審査委員。飲食施設のアドバイスなども行う

店舗DATA「OKUDA」パリ店 7 Rue de la Trémoille,Paris 75008 France TEL:+33(0)140701919、日本での予約 TEL:03-5766-6323営業時間/12:00~13:30L.O.、18:00~21:30L.O.、月の昼夜と火の昼、8月中旬、元旦は休み席数/23席

(写真=前田宗晃)