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犬養裕美子の冒険するレストラン

古典ベースに、現代的な構成 王道ガストロノミーを貫く次世代のホープ!

ラ フィネス

2014年1月14日
ラ フィネス

「RED U-35」の優勝作品、フランス料理のテクニックを用いた「親子丼 白トリュフ風味」

2013年11月4日、35歳未満の料理人によるコンペティション「RED U-35」の第1回優勝者が決まった。東京・新橋のフレンチ「ラ フィネス」のオーナーシェフ、杉本敬三氏だ。このコンペティションは優勝賞金が計500万円。この賞の目的は“若い料理人に夢を”という飲食業界の“期待”であり、料理の腕はもちろん、個性的な発想や世界にアピールするキャラクターなども重視される。

杉本シェフは子供の頃から料理が好きで、15歳の時にはすでにレストランを借りて出張料理人としてフェアを催していたほど。高校卒業後すぐフランスへ旅立ち、あえてパリや有名店を避けて合計12年間の修業を積んだ。そして12年3月に新橋で独立。小さな飲み屋がひしめくエリアで、料理は1万5000円、2万2000円のディナーコース、46坪の広さで天井高6mの見事なグランメゾンを立ち上げた。食器や内装にこだわり、総工費に約1億円をかけた。

「自分には派手な経歴もなければ、人脈があるわけでもない。まず、お客様に来ていただけるきっかけがないといけない。コンペティションに参加したのは、少しでも多くの方に興味を持ってほしかったから。もちろん、賞金も魅力でした」

受賞から2カ月がたち、どんな変化があったのか?

「目標だった“毎日、予約でいっぱいの店”になると同時にキャンセルも増えた。その対処に戸惑っています。次の目標は、“キャンセルされない店”ですね」

期待が高まる杉本シェフの料理だが、意外にも古典ベース。コンテストのテーマで、この冬の特別メニューにある“玉子”料理は、鹿のコンソメのスープの上に卵黄のコンフィ、トピナンブールのエスプーマ。その上にトリュフを削り、ガラスの蓋で香りを封じ込む。テーブルでは蓋を開いて、香りから楽しむ料理だ。シンプルでいてうま味のポイントを逃さない。それこそがこれからのガストロノミーの主流だろう。

自己アピール欄に大胆にも「教科書に載るような料理人になりたい」と書いた杉本シェフ。料理だけでなく、労働問題や若手の育成などの問題を、若い世代から提言することには大きな意味がある。その点でも杉本シェフの今後に注目したい。ちなみに、新年最初のプロジェクトは、1月中旬に発表予定の「くまモン」のキャラ弁「赤べん」のプロデュースだ。

ラ フィネス

店は「独学者」がコンセプト

犬養裕美子

犬養裕美子(いぬかい・ゆみこ)レストランジャーナリスト。東京を中心に世界の食文化やレストランの最前線をレポート。農林水産省料理人顕彰制度「料理マスターズ」審査委員。飲食施設のアドバイスなども行う

店舗DATA「ラ フィネス」 東京都港区新橋4-9-1 新橋プラザビルB1TEL:03-6721-5484営業時間/火~金18:00~24:00(21:00L.O.)、土12:00~16:00(13:30L.O.)、18:00~24:00(21:00L.O.)、日月休席数/32席

(写真=前田宗晃)