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犬養裕美子の冒険するレストラン

老舗洋食店とカリスマシェフによる“日本の洋食”の進化形

「東京 東洋軒」

2014年2月18日
「東京 東洋軒」

ハヤシライス(2730円)はデミグラスソースベースで、野菜を煮込んで出した甘味、とろみが特徴

1月15日、赤坂に「東京 東洋軒」が、三重「東洋軒」の東京店としてグランドオープンした。その強力なパートナーが「NARISAWA(ナリサワ)」の成澤由浩シェフだ。成澤シェフといえば「土のスープ」をはじめ、独自の世界観を持ち、国内外で高い評価を得ている。

ガストロノミーの世界のトップランナーと、歴史と伝統を守り続ける老舗洋食店がどう結びつくのか。その興味深いコンセプトは、成澤シェフと3代目猪俣憲一氏の間で交わされた「次世代に伝える洋食」だ。

「東洋軒」は1889年、東京・三田で創業。猪俣氏の祖父が三重に店を出し、独立。その後、東京は閉じ、三重店がその歴史を引き継いできた。

10年以上前に知人を介して知り合った2人。猪俣氏は「成澤氏と出会わなければ、東京進出の夢も抱かなかっただろう」と語る。「東京店は特別な店。素材は天然にこだわり、料理人の手作業が伝わる料理を目指します」。成澤シェフも「日本人ならみんな洋食は大好きでしょ。自分なら日本中にある優れた素材で作ってみたいと思っていた」と言う。

2人は「東洋軒」の味を守りながら、現代の味覚に合った味を生み出すため、試食を繰り返した。渡り蟹のクリームコロッケには高知県徳谷産フルーツトマトのソース、野菜をたっぷり使った松阪牛のハヤシライス、松阪牛と鹿児島県放牧黒豚のメンチカツなど、一つひとつ丹念に店独自の素材を吟味。また、フライものには米油、昔懐かしいバターロールにも発酵バターを使うなど細部にまでクオリティにこだわった。

さらに驚くのは、ディナーで出る、炊き立てのご飯。厨房には8口の特製ガス台があり、テーブルごとに土鍋で炊く手間を惜しまない。

コースは昼3990円、夜6090円(ともにサービス料10%)。アラカルトも順次対応していく。店内は天井高6m。白い壁に、モノトーンの家具がシックなダイニング(30席)と個室(2~10席、使用料あり)があり、ゆったりと会食を楽しむには最適だ。

昨年、ユネスコの無形文化遺産に「和食」が登録されたが、日本の食文化は多様。西洋料理をご飯に合うようにアレンジした“洋食”もまた、日本独自の食文化だろう。「東京 東洋軒」の料理は日本の素材にこだわり、洗練を目指している。外国人にとっては、洋食もまた“和食”に見えるかもしれない。

「東京 東洋軒」

メンチカツ(2520円)にかかるウスターソースは、自家製で無添加

「東京 東洋軒」

成澤由浩総料理長(左)と、中塚貴之ヘッドシェフ(右)。中塚シェフは「NARISAWA」出身

犬養裕美子

犬養裕美子(いぬかい・ゆみこ)レストランジャーナリスト。東京を中心に世界の食文化やレストランの最前線をレポート。農林水産省料理人顕彰制度「料理マスターズ」審査委員。飲食施設のアドバイスなども行う

店舗DATA「東京 東洋軒」東京都港区元赤坂1-2-7 赤坂Kタワー1F TEL:03-5786-0881営業時間/11:30~14:00L.O.、18:00~21:00L.O.、不定休席数/約40席

(写真=前田宗晃)