「日経レストランONLINE」は、「日経レストラン」の休刊に伴い、3月末日をもって更新を休止することになりました。長らくご支援を賜りました皆様に厚く御礼を申し上げます。

女子大生あすみの飲食店再建日記

第15話 あすみからの手紙

2012年2月8日
前の記事

一大外食チェーンの経営者・小川昌一郎の一人娘・あすみの夢は、父の跡を継ぐこと。そんなあすみに、昌一郎は入社試験の代わりとして、営業不振の飲食店を再生させるいくつかのミッションをこなすことを命じた--。あすみが最初に出向いたのは「居酒屋三歩」。料理はそこそこ美味しいが、接客に課題を抱えている店だ。アルバイトとして働き始め、積極的に店舗改善の提案したあすみは、侑哉とサチの思わぬ反撃に遭い一時はくじけそうになるが、腹を割って話し合うことでようやくわだかまりがなくなり、チームは一つになると同時に売り上げも上がった。

「店長、お話があります。」

翌日あすみは友夫に今回のミッションについて正直に話をした。

「そうか、そんな事情があったんだ。全く知らなかった…」

「という事情なので私はそろそろこのお店を去らなくてはなりません…」

「そっか、寂しくなるな…」

「すみません、みんなには内緒にして下さい。シフトインしている分はしっかりとやらせてもらいますから。」

「でも一番頑張ったあすみちゃんが抜けるというのは痛いな。みんなにきちんと話をしたほうがいいんじゃないかな…」

「それは私がいなくなった後に店長から話をしてください。みんなには手紙を書いていきます。」

「わかった。これまで本当にありがとう。寂しいけどあすみちゃんの努力を無駄にしないようこれから更に頑張るよ。しかし今回はすごくいい勉強になった。やればできるんだって思ったよ。しっかりやってるかたまには見に来てね。」

「はい、ありがとうございます。これからも頑張って下さい。」

こうしてあすみの第1ミッションは大成功に終わった。あすみにとっては勉強になったことばかりだった。やればできるという反面、人間関係の大切さを学んだ。

昌一郎が出した第1ミッションはどうやら自分ひとりでは結局何もできないということをあすみに理解させたかったようだ。どんな良い改善プランがあってもそれをやるのは人間、みんなの気持を一つにすることの大切さを学ばせたかったのだろう。

ましてやあすみはすぐにいなくなる人間、当然残ったスタッフが力を併せてやり続けるという組織風土を残すことの方が大切なのだ。

そんな昌一郎の思いは間違いなくあすみに伝わったのだろう。一つ階段を上ったあすみはみんなに想いを託して店を後にした…

<居酒屋三歩のみなさんへ>

店長から事情をお聞きになったと思います。無責任かと思われるかもしれませんが許してください。みなさんと共に目標を達成できたことは私にとっての誇りです。

本当にありがとうございました。

これからもお客様のことを第一に考えて笑顔で楽しんで下さいね。

私も一生懸命次のミッションクリアに向けて頑張ります。

また遊びに行ったときはやさしく出迎えて下さい。みなさんのこと絶対に忘れません。頑張って下さい。

PS、店長まかない美味しかったです。

(第一章おわり)

「女子大生あすみの飲食店再建日記」のご愛読ありがとうございました。

著者プロフィール

鬼頭誠司(きとう・せいじ)
1971年、名古屋市生まれ。1994年、愛知大学法学部卒業。大学時代から名古屋市で居酒屋を経営し始め、12年で20店舗・年商20億円に拡大する。現在、コンサルティングや受発注システムの運営を行うキューズファクトリーズ社長

前の記事