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調理の基礎技術

押し切りと引き切り

2005年11月22日

野菜は手前から押し切りにし、肉や魚は手前に引いて切る。……なんで?

一般に、野菜の繊維は硬くて粗いため、押して切る方が、しっかりと強い力を加えることができて切りやすいのです。具体的には、刃の薄い刃先から切り始めて、そのまま包丁を向こうへ押し出すようにして刃の厚い刃元へと移動させます。こうすると力を入れやすく、ザクッと簡単に切れます。

[真上から押して切った場合] 真上から押して切った場合の刃の角度(=本来の刃の角度)
[引き切りの場合]引き切りの場合の見かけの刃の角度


一方で、魚や肉を力任せに切ろうとすると、細胞が軟らかいのでつぶれてしまい、きれいに切れません。肉や魚のうまみは細胞の中にあるので、つぶすように切るとおいしさも逃げ出してしまいます。ですから、肉や魚の場合は、包丁に力を入れないようにスーッと引きながら切るのです。

引き切りのコツは、できるだけ刃全体を使うようにすること。刃をすべらせながら切ることで、実際の包丁の刃よりも鋭い角度の刃で切ったのと同じになり、組織を崩さないできれいに切れるからです。(右図)プロの料理人が、刺身を作るときに長い包丁を使うのは、刃を長く使って切断面をよりきれいに仕上げるためなのです。

文=藤生久夫
撮影協力(包丁提供):マサヒロ(TEL : 0575-21-2100)