「また行きたくなる店」とは

さすがに少しずつ肌寒くなってきましたね。副編集長の中野恵子です。こんな季節には、日本酒がいっそうおいしく感じられます。

先日、飲み食い好きの友人たちと盃を傾けていたときに、「最近、印象に残った店は?」という話になりました。

友人A(女性):「私は、翌日、朝起きたときに、前の日にいただいたお料理でパッと思い出すものがある、というお店かな。全般に美味しかったというお店は多いけど、意外と記憶に残っていない。『そういえば、何食べたっけ?』となるんだよね」

友人B(女性):「そうそう。かといって、やたらに大きいだけとか、鍋にバナナ入れるといったようなヘンなメニューは印象に残るけど、また行きたいとは思わないしね。ちゃんと記憶に残る店って少ないよね」(ちなみに、バナナ入りの鍋を出しているお店は見たことがありません)。

友人C(男性):「僕は、翌日の“お通じ”がいい店には、いい店だなあと思って、また行きたくなるなあ」(皆、爆笑)。

そうしてひとしきり、おいしくて印象的だった料理や店の話に花が咲いたのでした。

そこで挙がったのは、「珍しい牛のミルクで作ったチーズと梅干の組み合わせ」だの「フルーツを練りこんだパスタ」だのといったこだわりのメニューから、「あの肉の焼き加減は絶妙だった」といったシンプルな料理まで様々。

ただ、そこには共通項がありました。それは、「人」です。友人たちが印象に残っていると言ったものは、必ず「シェフがこう言ってた」「店の人に聞いたらこうだった」という“説明つき”なのです。一生懸命探した食材、趣向を凝らした料理は、もちろんそれだけで素晴らしいものなのですが、提供する人の「思い」や「愛情」がセットになって初めて「記憶に残るものになる」のだろうという気がしました。

私が最近印象に残ったものに、東京・広尾の「レストラン&バー J」でいただいた「2種類の大根で作ったババロア」があります。少しツブツブでザラリとした食感の残る真っ白な大根のババロアの上に、紅芯大根のトッピングの赤が際立つ、優しい甘さの一品です。

残っている味わいの記憶は、シェフの植木将仁氏の話と共に、です。

「30代にときには、これとこれを組み合わせたらこんな味が作れる、といった『足し算の料理』を考えていましたが、40代になって、“食材の声”を聞くようになりましてね。今は、どうしたらその素材が生きるかが、僕のテーマになってます。この大根のデザートも、砂糖は使っておらず、素材の甘みなんですよ」

こんなことをしみじみとおっしゃってました。こうして書くと、特別珍しい話というわけではないかもしれませんが、食材と料理への愛情あふれる口調が、心に残りました。スーパーで大根を見るたびにババロアと植木シェフの話が思い起こされ、「また行きたいな」と思うのです。

こんな風に感じるのは、自分もアラフォー世代の“大人”になったからかもしれません。

2009年11月18日|Posted by 日経レストラン編集

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