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編集部のマルチスコープ

忙しいときこそゆっくり話す

こんにちは。日経レストランの太田憲一郎です。先日、初めて利用した居酒屋で、接客時の話し方が気になったことがありました。

ファーストドリンクに「ホッピー」を注文しました。しばらくすると女性スタッフが、ホッピーとグラス、無色透明のボトル、氷入れというセットを運んできて、何も言わずにすぐ立ち去ろうとしました。

無色透明のボトルには油性ペンで目盛りが書き込んでありました。どうやらボトルの中身は焼酎。つまりホッピーのセットでいうところの「中(なか)」です。お代わりはお客がセルフサービスで作るという仕組みのようで、透明ボトルの目盛り一つがグラス1杯分の「中」の量を示すらしいことも少しずつ分かってきました。

その理解が正しいかを念のため確認しようと、先ほどの女性スタッフを呼び止めて尋ねてみました。ところが、このスタッフが早口すぎて、騒がしい居酒屋の中ではよく聞き取れません。何度も聞き返した末にホッピーの仕組みが自分の想像通りだったことは分かりましたが、スタッフの対応には良い印象を抱きませんでした。

この店を初めて利用するお客も少なくないはずです。ホッピーセットを席に運んだときには「飲み方はお分かりですか」などと一言確認すべきでしょう。不慣れなお客には簡単な説明をするようにしたほうが印象はぐっと良くなるはずです。

ちょっと見回すと、50ほどある席は8割ほどが埋まっていて、ホールの担当はさきほどのアルバイトらしき女性スタッフ1人とキッチンから時々出てくる店長らしき男性スタッフしかいません。かなり忙しそうです。

その様子を見て、私はこんなことを推測しました。

きっと、この店は慢性的な人手不足で、ホールスタッフの作業を軽減するためにお客が自分で焼酎を追加する仕組みを導入したのでしょう。そして、1人だけの女性スタッフは、ホッピーの飲み方をたくさんのお客に繰り返し説明してきたのだと思います。そうするうち、すっかり暗記してしまった説明が、忙しさの中で、お客に聞き取れないほど早口になってしまったのではないかと想像したのです。そう考えながら、フロアーを飛び回る女性スタッフの顔をよく見ると、笑顔を浮かべるどころか、疲れた表情をしていました。

スタッフは店内でのロールプレイングで料理やドリンクの説明手順を何度も練習していると思います。きっと、そのときは、自然なスピードで分かりやすく説明できていているかもしれません。しかし、それを営業中の忙しい時間にも同じようにできるとは限りません。店長は、忙しいときこそスタッフが練習通りに笑顔でゆっくりと話せているかをチェックしたほうがよいと思います。話すスピードを少しゆっくりにするだけで、相手の理解度や抱く印象はがらりと変わるのですから。

2014年3月27日|Posted by 日経レストラン編集