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日経レストランOBの「飲食店開業への道」往復書簡

すがちゃん:車も店も安全運転が第一。無理のないスタートを

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ぎだちゃんへ

おお、そうですか!いよいよ開店に向けて秒読みですね。準備中に調達した什器や備品が届き、具体的な店の姿がだんだん見えてくるのも楽しいものですよね。僕の場合もがらんとした棚にお酒を並べ、知り合いの書道家に揮毫してもらった真新しい看板を掲げた時に店を始めるという実感がふつふつと沸きました。まだ1年半くらい前のことですが、随分昔のことのような気がします。

というのも、いざ店が始まると何かに追い立てられるように身も心も休まらない日々が続くからです。多くの飲食店主が「開店の準備をしている時が一番楽しかった」と言う理由がよーく理解できました(笑)。最初に悲鳴を上げるのは体です。仕込み時間を含めるとほぼ半日立ちっぱなしの作業は、デスクワーク中心の元サラリーマンの足腰を容赦なく痛めつけます。開店初日、片付けを終えて床に就いた我々夫婦は一言の会話を交わす余裕もなく、足の傷みで明け方まで一睡もできませんでした。

精神的にも疲労が溜まります。ただでさえ混み合っているのに作業の段取りが思うに任せずイライラしたり、オーダー忘れや間違いもしょっちゅう。食器も随分割りました。それでもお祝いで駆けつけてくれたお客様と話もしなければならず、手と足と頭がバラバラの状態が続きました。ついに開店10日目頃に重い風邪をひいてしまい、高熱が出たうえに喉をやられて声も出ない状態に。仕方なく1組だけ入っていた予約客に断りの電話を入れて休業させてもらいました。この時の予約客が誰あろうぎだちゃんでしたね。不思議な縁に本当に助けてもらいました。

若い飲食店主の場合、開店1年目は休みを取らずに頑張ったという話はよく聞きますが、さすがに50路を越えた体に無理はききません。というより、1日でも長く店を続けるうえで最も大事な条件は健康です。無理をして短命で終わるより、少々さぼりながらでも長命を選びたい。あっけなくダウンしてしまった自分の情けなさを恨みながらも、そう決心しました。

その後は何よりも体に気を配るようになりました。就寝前のストレッチや休日の整体院通いでケアをするだけでなく、風邪などの予防にも注意を払っています。水を使う厨房は足元が思った以上に冷えるので、秋口からズボン下を着用したり、立ち仕事をする人がかかりやすい静脈瘤を防止するタイツを履いたりしています。

さらに、お客様の“協力”も必要です。閉店時間を過ぎても長居をしたがるお客様はよくいらっしゃるようですが、当店でははっきり閉店の旨を伝えて帰っていただくようにしています。また、お客様から「一緒に1杯飲みませんか?」というお誘いをいただいても一切お断りするようにしています。店主が閉店後に客と一緒に夜中まで飲んでいるような店をいくつか知っていますが、例外なく体を壊して閉店を余儀なくされているからです。

店主が健康で1日でも長く営業を続けた方がお客様にとっても嬉しいはず。ぎだちゃんもそう信じて無理せず「ぼちぼち」と始めてください。余裕ができたらイベントをやったり営業時間を延長するなど、アクセルを踏む機会がやってきます。車も店も安全運転でいきましょう。質問にあった店のPRのやり方については次回お話させてもらいますね。では、開店までの追い込み頑張ってください!

すが(「酒庵 酔香」店主)

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2011年10月3日|Posted by 日経レストランOB

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