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編集部のマルチスコープ

豆腐をデザートとして、酒と一緒に楽しむデザートバー

京とうふの店内

京都風の豆腐や日本の食材をお菓子に仕立て、日本酒などのお酒と一緒に楽しむというデザートバー「京とうふ」(Kyotofu)がニューヨークで人気だ。

店舗はタイムズスクエアやブロードウェイといった観光名所の近くにあり、周囲には国際色豊かな飲食店が数多く立ち並ぶ。

豆腐を思わせる白い壁に小さな木目のドア。一見何のお店なのだろうと、通りすがる人々の注意を引くのに十分だ。

オープンは4年前。オーナーの一人である二コール・バーメンソロ氏が日本に留学した時に豆腐を食べ、そこから日本食の魅力に取り付かれた。米国に帰国した後は銀行で働いた時期もあったが、日本の食文化をニューヨークで広めたいいう気持ちを抑えきれず、飲食店を出すことになった。

日本の食材を使ったデザートとお酒の組み合わせを楽しむというコンセプトは、文化の紹介とともに、店に特徴を持たせることにもつながっている。こうして出来上がったのが、新業態「デザートバー」である。

デザートを食後の楽しみにするのではなく、ワインやシャンパン、日本酒、焼酎などと一緒に楽しむ「酒の肴」にするという斬新な発想だ。

日本では「スイーツバー」という呼び方の法が一般的には通りが良いかもしれない。チョコレート専門店がお酒とチョコレートを組み合わせたメニューを出す店をオープンさせたり、洋菓子店がワインとデザートを組み合わせたレストランを開業するなど、日本でも同様のコンセプトの店は、少しずつ増えてきている。

京とうふは店名が示す通り「豆腐」にこだわり、「日本」にこだわっている。食材の80%は日本からの輸入品。中でも京都の食材を多く使っており、抹茶など、京都の老舗から直接買い付けている食材も少なくない。

米国にも日本の食材を扱う卸業者は数多く存在しており、そこから調達すれば簡単なのに、わざわざ日本から買い付けているのだ。

「コストがかかるのが、課題だけれど…」と、京とうふブランドマネージャーの木高敦子氏は苦笑する。

メイン食材の豆腐は毎日、日本製のにがりを使い、店で作って提供している。『米国の豆乳を使うと固まらないため、どちらも日本のにがりと日本の豆乳を使っている』 と木高氏は説明する。

豆腐をデザートにするという米国人ならではの「飛んだ発想」に、日本人客は驚くようだ。そして食べてみると、さらなる驚きが待っている。「豆腐は元々、デザートのための食材だったのでは。そう勘違いするほど、ここの豆腐のデザートはおいしい」。そんな感想を漏らす客も多いという。

味噌を加えたカップケーキが一番人気

京とうふで一番人気の商品が「チョコレート・スフレ・カップケーキ」。チョコレートのカップケーキに西京味噌(白味噌)を加えることで、チョコレートの甘さに塩味を加えているのがポイントだ。ニューヨーク・マガジン誌が選ぶ「ベスト・カップケーキ」にも輝いており、おいしさは折り紙付きだ。

デザートと一緒に楽しむ酒もいろいろな種類のものが揃い、しかも、メニューに合わせてお勧めしてくれる。

例えば、先ほどの塩味がアクセントになっている、西京味噌を添えたチョコレートケーキには甘い「華鳩貴醸酒」という日本酒を、甘さが多めの「豆腐の黒蜜がけ」には、アルコール度数が一般的な日本酒の半分程度で、口当たりの良い「一ノ蔵ひめぜん」を勧める、といった具合だ。

勿論、地元の米国人を唸らせる組み合わせも用意している。白ゴマを振った豆乳アイスクリームがそれだ。

白ごまがピーナッツバターに似た味わいを醸し出し、子どものころに食べたピーナッツバター&ジェリー(ジャム)・サンドイッチを思い起こさせると、地元客に人気のメニューの1つになっている。

ANAが機内デザートに採用

「味噌と一口に言っても、甘いものも辛いものもある。そんなバラエティ豊かな味噌を、塩や砂糖の代わりとして使うことで、ヘルシーでありながら、(米国人にとっては)見たことがない日本テイストのお菓子が出来上がる」と木高氏は言う。

これだけ食材にこだわっていながら、値付けは良心的なものだ。ディナーが23ドルと18ドルのプリフィックスメニューから選べる。

ダイニングテーブルに24席、カウンターに14席の合計38席と決して大きい店ではないが、いつもお客で一杯。この評判を聞きつけたANAが今年春、国際線のファースト、ビジネスクラスのデザートに採用したほどだから、当地での人気ぶりが分かるだろう。

著名な食材店「ディーンアンドデルーカ」を始め、売り上げの3割がオンラインショップで売れている点も大きな特徴。国際展開にも力を入れており、この9月には、韓国に出店する予定だ。

「今後は日本料理の持つ、見た目の繊細さをもっと取り入れたお菓子作りに力を入れたい」。そう木高氏は言う。

これほどの人気店になりながらも、「日本」という素材をもっと生かし切るための努力を惜しまない姿勢に強く感銘を受けた。

レストラン概要

デザートバー 京とうふ(Kyotofu)
705 ninth avenue (between 48th and 49th) New York, NY USA
Tel : 212-974-6012
http://www.kyotofu-nyc.com/index.php?p=370

取材協力:アスパイア・インテリジェンス社代表 信元夏代 www.aspireintelligence.com

写真:kyoutofu

2010年8月31日|Posted by 酒井 栄子(フリーライター)