「今だけ」「ここだけ」「あなただけ」~ユニークな経営で伸びるM社とは
みなさん、ムジャキフーズという会社をご存知でしょうか。
「トラスト方式」と呼ぶユニークな経営手法で、急成長している飲食企業です。例えば、今話題の「俺のハンバーグ山本」という店は、ムジャキフーズから誕生したんですよ。

売上高前年比120%超の秘訣を、ムジャキフーズ社長の田代隼朗さんが語る
先日、ムジャキフーズ社長の田代隼朗さんと会ったのですが、話がとても面白かったので、今回はいつもと趣向を変えて、このコーナーでインタビューすることにしました。ムジャキフーズの強さの秘密が垣間見られます。どうぞお読みください。
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高柳 不況、真っ只中ですけれど、ムジャキフーズは好調ですね。
田代 今取りまとめていますが、2009年5月期は売上高45億8000万円、経常利益3億8000万円を達成できそうです。前年同期比で売上高が21.8%、経常利益が200%増加しました。
高柳 まさに不況知らず、ですね。でも、時々聞くんですよ。「ムジャキフーズって、どんな会社だかよく分からない。ナンだか怪しい」って(笑)。
田代 そうなんですよ。きちんとビジネスしているのに、怪しいって言われる(笑)。
高柳 どんなビジネスモデルなんですか。
田代 「トラスト方式」と呼ぶビジネス方式を展開しています。ざっと説明しましょう。この方式は、飲食店を開店するのに必要な資金をムジャキフーズが負担し、店経営の仕事を個人に委託するものです。業態、店名、メニュー、価格などを個人が決められます。要は、料理の技術や経営センス、アイデアはあるけれど資金がない、という人に店の大将になってもらおうということです。
個人とムジャキフーズとの業務委託契約には大きく分けて、トラストA、トラストB、トラストCの3段階があります。Aは人や店舗など、すべてをムジャキが用意し、大将には業態や店名決め、メニュー設定、店舗運営などを任せるものです。“体一つ”で来て、店を始めてもらうということですね。次はBですが、これは店舗だけをムジャキが用意し、人の採用までを大将が自分で担えるものです。Bまでは、運営は大将にすべて任せますが、店自体はムジャキフーズの店ですね。そして最後のCが、店をムジャキから大将が購入し、すべてを自分で手がけるというものです。ムジャキとはコンサルティング契約だけをします。
高柳 資金がなくても自分の思うままに店を作れるし、ムジャキへの支払いは一定だから、売れば売るだけ自分の懐に入る。しかも、もし経営に失敗しても大きな借金を背負い込まなくてもいい。資金のない個人にとって、さまざまなメリットがありますね。
田代 その通りです。人に使われるより、自分で店を運営したいという前向きな人にオススメのビジネスモデルですね。
高柳 なぜ、自社で飲食店を経営せずに、店の運営を個人に委託しようと思ったのですか。
田代 素晴らしい技術を持っているのに、独立できない料理人がたくさんいるでしょう。その人たちに「自分の店を持つ」チャンスや夢を与えたかった。
高柳 それだけ?
田代 あはは。それもあるけれど、実はある経験に基づいて考え出した方法なんです。昔、自前でラーメン屋の経営を手がけたときのことです。不動産の営業から脱サラし、会社を立ち上げ、店舗展開を始めました。3店舗までは順調に行ったのですが、4店舗目が赤字になってしまいました。お客様からは「チェーンなのに、店によって味が違う」というクレームが入りました。あわてて現場にアドバイスしたのですが、うまく行かない。素人で飲食業界に参入したので、あせりました。
で、あーでもない、こうでもないとやっていたら、ある日、現場からこんなキツイ一言をもらいました。
「社長、飲食の経験もないのに、つべこべ言わないでくれ。任せてくれれば、店を立ち直らせて見せる!」。私も頭にきて「勝手にしろ!」と、言ってしまったんですよ。
高柳 ああ、言っちゃった。
田代 言っちゃった(笑)。ところが、です。任せてみたら、どんどん業績が上がってきたんです。それで、気づきました。すべての責任を与え、現場が「ここは自分の店だ」と思うことが、一番成果を出すことができる方法なのだとね。だから店長じゃ、ダメなんです。あくまで独立した大将でなければならない。
高柳 それでムジャキフーズの店は、ラーメンや寿司、天ぷら、ハンバーグなど、業態がばらばらなんですね。
田代 そうです。それに今は、個店の時代だと思うんですよ。消費者は、どこにでもあるものは望んでいない。「今だけ」「ここだけ」「あなただけ」。そんな店でないと、お客様は集まってくれません。それに、昨今話題になっている食の安心・安全の面においても「店主の顔が見える」ってことが重要でしょう。お客様は店主を知っていれば安心できるし、店主も顔を覚えられていれば、変なことはできないですよ。
高柳 「今だけ」「ここだけ」「あなただけ」か。うまいキャッチフレーズですね。ムジャキフーズから生まれた、今話題の店「俺のハンバーグ山本」も、商品に対するこだわりが伝わってくるいい店名だな、と思っていました。
田代 昔から、町に根付いている個人経営の定食屋はなかなかつぶれないでしょう。そんな爆発的に稼ぐのではなく、末永く存続できる店を作りたいと思っているんです。その方が大将も幸せになれるし、ウチも儲かる。
高柳 ムジャキフーズにとっては、優良物件と経営センスのあるいい料理人を探すことが重要ですね。
田代 いい物件を確保し続けなければならないことは、ウチにとってのリスクかもしれません。でも、物件はカネを出せば確保できるものです。多くの大手飲食企業とは違い、ウチは物件確保のための上限設定などはしていません。収支さえ合えば、ギリギリまで出します。臨機応変に対応するので、大丈夫でしょう。
高柳 人材確保はどうですか。
田代 飲食は独立希望者が多い業界ですけれど、店主になれるレベルの人を確保するのは、なかなか大変です。今、毎月募集をかけて面接しています。
高柳 どんな人を求めているのですか。
田代 まずは信用できる人です。「トラスト方式」という言葉の通り、お互いが信頼し合えなければ、ウチのビジネスは成り立ちません。だから、契約希望者が来たら、基本的に最初はムジャキフーズの社員になってもらいます。実際に、一定期間ムジャキの店で働いてもらうんです。そしていよいよ店を出すとなったら退職して、ムジャキフーズと契約を結ぶんです。
高柳 社員の間に、技術チェックなどをするのですか。
田代 見るのはただ一つ。約束を守れるかどうかだけです。時間を守れるか、言ったことをきちんとできるか。はたまた勝手に休まないか、きちんと掃除できるか、下働きができるか…。つまり、人としてどうか、だけしか見ないんです。当たり前のようですが、これがビジネスの基本なのに、意外にできない人が少なくない。ここが大丈夫なら、後は仕事に対する思いが強ければ、かなりのことをできます。ちょっと働いてもらえば、その人がきちんとしているかどうかは分かりますから、早い人なら3カ月くらいで大将になります。
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話は、まだまだ続くのですが、長くなってしまうので、今回はここまでにします。次回は、田代さんの仕事に対する考え方や、パワーの源などについてお伝えします。お楽しみに。
【今週のちょいメモ】横浜・JR桜木町駅に「Bubby’s」というカフェ&レストランができたので、見てきました。横浜開港150周年の記念イベントの一環で開店したそうで、営業期間は2年限定ですが、高架下とは思えないほど、ゆったりとした店内が印象的でした。料理のコンセプトは、この店を手がけている米国人、ロン・シルバーさんの祖母の味、つまり米国の「おばあちゃんの味」です。売り物はパイやパンケーキ。とても美味でしたが、うどんや漬物が得意だった自分の祖母とは随分違うや、と感じました(当たり前です!)。
2009年6月10日|Posted by 高柳 正盛
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