「日経レストランONLINE」は、「日経レストラン」の休刊に伴い、3月末日をもって更新を休止することになりました。長らくご支援を賜りました皆様に厚く御礼を申し上げます。

編集部のマルチスコープ

ニューヨークで人気の食べ歩きツアーに密着(後編)

前編を見る

口の中が甘くなったところで、ピクルスで口直し。近くには有名なピクルス専門店があり、大きな樽にさまざまなピクルスが入っている。ツアー客たちは、75セントで定番の大きめのキュウリのピクルスを1個買ってかじる。気持ちのいい天気にも恵まれ、一人ではなかなかできないが、みんなでピクルスをかじりながらの散歩は愉快だ。

いろいろな種類のピクルスを入れた樽が並ぶピクルス専門店

次に向かったのは、イル・ラボラトリオという行列のできるジェラートショップ。地元の人たちも買いに来るので待ち時間がかかるが、行列に並んで地元の人と同じような体験をしてもらうのも、行列のできる店をツアーに組み込む理由だそうだ。

それから、ニューヨークの駄菓子に向かう。70年以上同じ家族が経営している店だそうで、外観も古めかしくて駄菓子屋にふさわしい。店内の雰囲気も、ニューヨークと場所は変われど、日本に昔たくさんあった駄菓子屋を思い出させる。数十年前にタイムトリップしたようだ。だが、一見駄菓子屋ながら、よく見ると駄菓子とは言えないような高級チョコレートやドライフルーツなども売られている。いちばん私の目を引いたのは、大きなガラスのビンに絵の具のように一色ずついれられたM&M’sのチョコレートだった。ここでは子どもたちが大喜びで、お菓子を物色していた。

子連れファミリーがなかなか駄菓子屋から出てこないので、テイラーさんは、「この通りを渡るとメキシカンレストランの向こう側にカップケーキの店があるから、そこで落ち合おう」と、大人たちを先にカップケーキ屋に向かわせる。数年前からブームのカップケーキ屋はどんどん増え、しかも味もよくなり種類も増えている。ツアーのトリを飾ったのはその数軒先のカノーリ専門店だった。カノーリはリコッタチーズを使ったクリームをクッキーで巻いたようなお菓子で、ニューヨークではイタリア系のベーカリーでよく見かけるが、それほど種類は多くない。この店では、カップケーキ並みに色とりどりのカノーリが売られていた。

みんながカノーリを食べ終わったところで、ツアーも終盤。「お勧めレストランを教えて欲しい人は?」というと、ほとんどのツアー客がイエスと答える。そこで、テイラーさんは、「イタリアンならどこそこ、場所はかくかくしかじか。ハンバーガーが食べたい人は?魚が食べたい人は?メキシカンは?このレストランは予約がいるよ・・・」と、レストランの名前とロケーションを立て板に水で披露。テイラーさんの胃袋と脳みそはホットラインでつながっている。ツアー客はせっせとメモをとる。私もメモした。なにしろ、テイラーさんの舌とお腹は、インターネットのグルメ情報やガイドブックよりもずっと信用できそうだから。

おまけみたいに、たまには観光案内もするテイラーさん

こうして、今日も無事にツアーが終わった。あとはみんながそれぞれ、目指すレストランや宿泊先のホテルに迷子にならずに帰れるように地下鉄の駅まで送り届ければ、テイラーさんの仕事も終わる。地下鉄の駅に向かう途中、すっかりツアーの雰囲気に慣れてきたミシガン州から来た家族のお父さんが、話しかけてきた。「旅行に行くんだったら、こんなふうに地元の友達に案内してもらいたいね。東京から来たの?東京でもこんなふうに誰かに案内してもらえたらいいなあ」。

3時間半あまりのツアーですっかりテイラーさんのホスピタリティの虜になったツアー客たちは、地下鉄の駅まで送ったテイラーさんと別れ際にハグしたり、チップを渡したりしていた。この日は、午前中にも39人のツアー客をアテンドしてから、この甘いものツアーを引率したテイラーさん。疲れないのかと聞くと、「疲れはないが、さすがに2つツアーが終わると足が痛くなる。それから、顔の筋肉もこわばってくるね」という答えが返ってきた。

2010年10月19日|Posted by 手代木 麻生(フリーライター)