人気オーナーシェフ、木下威征さんが語る「快適分煙」の店づくり【後編】

人気オーナーシェフ、木下威征さんが語る「快適分煙」の店づくり【後編】

喫煙者が非喫煙者を思いやる、マナーのある空間が飲食店の心地よさをつくる

2016年2月23日

フランス料理、イタリア料理、日本料理など食事を中心としたレストランでは、店内が全席禁煙というケースが増える中、東京・恵比寿のフランス料理店「オー・ギャマン・ド・トキオ」をはじめ5店の人気店を手がけるオーナーシェフ、木下威征(きのした・たけまさ)さんは「分煙」というスタンスで快適な店づくりを行う。今回は、グループ店の中から「キャーヴ・ドゥ・ギャマン・エ・ハナレ」の分煙スタイルを紹介する。

「オー・ギャマン・ド・トキオ」(東京・恵比寿)のオーナーシェフである木下威征氏は、自身のレストランを開くときに、「喫煙者のお客様にも肩身が狭い思いをさせず、食事を楽しみながら、安心してタバコを吸える場所を提供したい」という思いから、「分煙」というスタイルを取ることを決めたと語った。

 自らも喫煙者であり、その視点から「タバコが吸えるレストランが、少なくなってきていること」を実感したという木下氏。
 さらに「飲食店の喫煙ルールは必要。しかし、全面的に禁止するだけでなく、喫煙者にとってのセーフティゾーンを用意してあげることが上手なルールづくりなのでは」と感じたことが、分煙環境整備につながった。

 今回は、ギャマングループの3店舗の分煙店の中から、東京・白金の「キャーヴ・ドゥ・ギャマン・エ・ハナレ」の分煙スタイルをご紹介しよう。

 東京メトロ白金高輪駅から徒歩10分ほどの同店は、木下氏が最初に「オー・ギャマン・ド・トキオ」をオープンしたビルの地下1階にある(「オー・ギャマン・ド・トキオ」は、2015年1月に恵比寿に移転)。

 店に入ると、手前にはオープンキッチンのカウンター席(8席)、テーブル席(6席)、バーカウンター(6席)が配された「CAVE(キャーヴ)」があり、こちらではオープンキッチンの臨場感あふれる空間で本格的な鉄板フレンチが楽しめる。
 一方、店内奥には白木のカウンター8席のみで割烹風のしっとりした趣の「HANARE (ハナレ)」がある。凜(りん)とした印象の空間では、和の要素を取り入れた“フレンチ懐石”を提供している。

「CAVE」(この写真の手前側と記事冒頭の写真)が喫煙可、奥に見える「HANARE」が禁煙

「CAVE」(この写真の手前側と記事冒頭の写真)が喫煙可、奥に見える「HANARE」が禁煙

「キャーヴ・ドゥ・ギャマン・エ・ハナレ」店内見取り図

「キャーヴ・ドゥ・ギャマン・エ・ハナレ」店内見取り図

 同じ店内でありながら、全く異なる雰囲気、料理が楽しめること、またラストオーダーが深夜2時で、遅い時間まで本格的な料理やアルコールが楽しめることから、近隣のお客様から食通の常連客まで、幅広い客層に愛されている。

 同店では、手前の「CAVE」が喫煙可で、奥の「HANARE」が禁煙だ。「HANARE」は、和食の繊細なテイストを取り入れた料理が多いため、タバコの煙が気にならないようにするためだ。
「店舗空間の中で、煙を仕切れる措置がとれることが分煙の必須条件だと考えています」と話す木下氏。同店の場合は、「CAVE」と「HANARE」の間には仕切りの壁があり、タバコの煙が流れにくいのと同時にブライベート感を高める効果もある。他の分煙店でも、個室や仕切りのあるバーカウンターを喫煙可のエリアとしている。

 喫煙エリアでは、強力な排気ができる仕組みが快適な分煙空間をつくるポイントとなっている。オープンキッチンの上にあるダクトは、一般的な機器の1.5倍ほどのパワーがあるものを採用し、調理中の排煙とともにタバコの煙も外に押し出す。
 また、給気口が外窓から直結しているため、自然な給気ができ、強力な排気とのバランスでタバコの煙やニオイがこもらないようになっている。

ダクトは一般的な機器の1.5倍ほどのパワーを持つ。給気口は外窓と直結している

ダクトは一般的な機器の1.5倍ほどのパワーを持つ。給気口は外窓と直結している

「喫煙できる『CAVE』にも、タバコを吸われないお客様がいらっしゃることもあります。顧客の情報は全店で共有していますので、常連のお客様の場合はスタッフが席の配置を考えて気持ち良くお食事ができるようにしますし、初めてのお客様の場合は、予約のお電話の際に喫煙可であることをお伝えしてご納得いただくといったこともあります。逆に、お客様の方から『タバコ吸える?』とお聞きになる場合もありますね」と木下氏。

 前編で木下氏が語ったようにお客様のマナーも良く、喫煙席に座っていても隣にタバコを吸わない人がいればバーカウンターに移動して吸うなど、「タバコは吸いたい。でも、吸わない人や周囲の人を不快にさせない吸い方をしたい」というように、喫煙者の気づかいが浸透しているからこそ、心地よい分煙空間が実現できていると言えるだろう。
 最近は外国人客も増えているが、“店の喫煙ルール”に関しては納得して食事を楽しんでいるという。

「繁盛店になるには、いろいろなお客様に支持されなければならない。店の方向性に関する経営者自身の覚悟も必要です」と木下氏は話す。
 同店の心地よい分煙環境は、喫煙者、非喫煙者双方の立場を考え抜いた、優しさのあるスタイルなのだ。

「オー・ギャマン・ド・トキオ」オーナーシェフ
木下威征(きのした・たけまさ)

1972年東京都生まれ。辻調理師専門学校を主席で卒業し、フランス・イタリアの星付き有名店などで修業を積む。帰国後「AUX BACCHANALES (オーバカナル)」で5年、白金台「MAURESQUE(モレスク)」では9年、料理長を務めて独立。2008年に「AU GAMIN DE TOKIO(オー・ギャマン・ド・トキオ)」を開店。2015年1月に恵比寿に移転オープン。「GAMIN =いたずら小僧」の名の通り、フランス料理の枠にとらわれない自由な発想のメニューは、訪れる人に驚きと感動をもたらす。お客様へのおもてなしの心を大切に、「一食入魂」の想いを胸に日々厨房にて腕を振るう。現在5店舗のオーナーとして活躍中。

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