人気オーナーシェフ、木下威征さんが語る「快適分煙」の店づくり【前編】

人気オーナーシェフ、木下威征さんが語る「快適分煙」の店づくり【前編】

「タバコはすべて禁止」ではなく、「ここならOK」という場所を用意してあげたい

2016年2月9日

タバコを吸うお客様と吸わないお客様、双方が快適に過ごすための快適な店づくりとして、飲食店の分煙環境整備は注目度が高い。その一方で、食事をメインとしたレストラン業態では、「店内は禁煙」という店を多く見かけるようになった。そんな中、東京・恵比寿のフランス料理店「オー・ギャマン・ド・トキオ」をはじめ、5つの繁盛店を手がけるオーナーシェフ、木下威征(きのした・たけまさ)さんは、あえて「分煙」というスタンスを守り続ける。木下さんが考える「快適な店づくり」とは?

――フランス料理をはじめとするレストランや和食店などでは、「全席禁煙」というお店も増えている中で、木下さんがあえて「分煙」を選択されたのはどうしてでしょうか。

木下:私は、2008年に白金に「オー・ギャマン・ド・トキオ」(2015年1月に恵比寿に移転)を最初に立ち上げる時、「喫煙可のレストランにしよう」と決めていました。
自分が喫煙者ということもありまして、レストランではタバコを吸える場所が本当に少なくなってきていることを実感していたので、「喫煙者のお客様にも肩身が狭い思いをさせず、食事を楽しみながら、安心してタバコを吸える場所を提供したい」と考えたのです。

オープン当初は全席喫煙可にしていたのですが、お客様の方が逆に周囲を気づかって喫煙を我慢されたり、店外で吸われたりすることが多かったのです。やはり、喫煙者は自分も含めてですが、周囲に気を配りながらタバコを吸うことが日常的になっているのだな、と感じました。

それ以降、基本的なスタンスは変わりませんが、喫煙者と非喫煙者が上手に共存できる空間を目指して仕切り分煙というスタイルをとっています。

タバコを吸うお客様からは「ギャマンは安心して吸える」と喜んでいただけていますし、吸わないお客様から苦情が出ることもほとんどありません。

――お客様の側でも、レストランでの喫煙マナーをきちんと心得ていらっしゃるからこそ、分煙が受け入れられているのですね。

木下:そう思います。確かに、喫煙者の割合が少なくなっている中で、タバコを吸う側がマナーとして意識すべきことは多いと思います。たとえば、和食やフランス料理店で繊細な味わいやワインを愉(たの)しむシーンなどでは、タバコの煙やニオイが気になるということもありますよね。

当店にいらっしゃる喫煙者のお客様も、そういった部分を含めて皆さんとても細やかな気づかいをされています。
現在、分煙にしているのは本店の「オー・ギャマン・ド・トキオ」と、白金の「キャーヴ・ドゥ・ギャマン・エ・ハナレ」、中目黒の「プラック・キュイジーヌ・ド・ギャマン・ブロックス」の3店ですが、喫煙席に座った方も周囲に気を配って吸っていらっしゃる。席で吸えるのに、隣でお食事中の方がいらっしゃると、わざわざバーカウンターまで移動して吸われるという方も多い。

それは、隣に別のお客様がいたら大声で会話するのを控える、といった気配りと同様の、大人のマナーなのではないでしょうか。

オーナーシェフの木下威征(きのした・たけまさ)さん

オーナーシェフの木下威征(きのした・たけまさ)さん

――オーナーシェフというお立場から、お店を分煙にするという決断は大きかったと思います。

木下:賛否両論があるのは、十分に理解しています。ただ、私はレストランを経営するからには、できるだけ大勢のお客様にいらしていただきたいと考えています。

ギャマングループでは、タバコを吸う方も吸わない方も、気持ちよく過ごしていただける店づくりをしている自信がありますが、それでも「タバコはどうしても嫌」というお客様に対しては「うちは喫煙可の店なので、申し訳ありません」とお断りするしかありません。
私は、そういったご意見も予測したうえで、覚悟を持って分煙というスタイルを選んでいるのです。

周囲の人を不快にさせないため、喫煙ルールを作ることは確かに必要でしょう。
ただ、「全面的に禁止」というだけでは逆効果な気がします。
禁止をするならば、「ここだったら大丈夫」という場所を決めてあげることが、上手なルール作りではないでしょうか。

また、店を運営する側も喫煙、禁煙に関して「どう選択すべきなのか」を、周囲の流れではなく自分の意志でしっかりと考えて決断することが大切だと思っています。

――今後、条例などで喫煙環境が一律に決められるという可能性もありますが、それについてはいかがでしょうか。

木下:条例となれば仕方ないですが、その場合でも「意見は言わせてください」と言いたいですね(笑)。タバコを吸うお客様と吸わないお客様、両者が本当に心地よく共存していく飲食店を作るためには、一方的な決断ではなく、いろいろな角度から意見を述べ、議論をする場が必要だと思っています。

※後編では、木下さんがオーナーを務めるギャマングループの一つ「キャーヴ・ドゥ・ギャマン・エ・ハナレ」(東京・白金)の、分煙の仕組みやサービスの工夫などについてご紹介します。

「オー・ギャマン・ド・トキオ」オーナーシェフ
木下威征(きのした・たけまさ)

1972年東京都生まれ。辻調理師専門学校を主席で卒業し、フランス・イタリアの星付き有名店などで修業を積む。帰国後「AUX BACCHANALES (オーバカナル)」で5年、白金台「MAURESQUE(モレスク)」では9年、料理長を務めて独立。2008年に「AU GAMIN DE TOKIO(オー・ギャマン・ド・トキオ)」を開店。2015年1月に恵比寿に移転オープン。「GAMIN =いたずら小僧」の名の通り、フランス料理の枠にとらわれない自由な発想のメニューは、訪れる人に驚きと感動をもたらす。お客様へのおもてなしの心を大切に、「一食入魂」の想いを胸に日々厨房にて腕を振るう。現在5店舗のオーナーとして活躍中。

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