訪日外国人観光客への「おもてなし」として分煙を考える【前編】

訪日外国人観光客への「おもてなし」として分煙を考える【前編】

時間帯とフロアで分煙環境を整え、訪日外国人観光客・日本人客双方の満足度を高める ——「すしざんまい 別館」(東京・築地)

2015年11月10日

8月に、当サイトで掲載した「東京都分煙環境整備補助金」でも述べたように、日本を訪れる外国人の数は年々増加し続けている。また、そのうち東京都を訪れる外国人旅行者は7割近く(2014年の例)で、飲食店をはじめとするサービス施設では外国人客への対応が急務だ。今回は、分煙環境の整備を含め、外国人客へのきめ細かいサービスが人気を博す「すしざんまい」(本社、東京・築地)の事例から、“おもてなしとしての分煙”を考える。

 日本を訪れる外国人観光客は、年々増加する傾向にある。その中でも、特に訪問率の高い東京では、2020年の東京五輪開催も控え、多言語でのメニュー表記やベジタリアン、宗教別メニュー対応、従業員の語学教育など、外国人観光客へのサービス強化に取り組む飲食店が徐々に増えてきている。

 分煙環境の整備も、満足度の高いサービスを提供するためのひとつの要素。では、現在の日本の喫煙事情は外国人観光客からはどのように見られているのだろうか。2015年1月に、「週刊ホテルレストラン」がJTBグローバルマーケティング&トラベルの協力を得て、外国人観光客の日本の喫煙環境についての印象や評価を把握するために行った「外国人観光客の日本に対する喫煙環境意識調査」のデータを例にとってみよう。この調査は、2014年11月〜12月に観光で日本を訪れた外国人(JTBグローバルマーケティング&トラベルのツアーに参加)482人を対象に行われている。

「外国人観光客の日本に対する 喫煙環境意識調査」概要

 まず「日本の喫煙環境の印象」としては、「街中に吸い殻が落ちていない」、「日本人の喫煙マナーがよい」など、喫煙者・非喫煙者双方から、8割を超える好評価を得ている。
 日本と自国の喫煙環境を比較した調査においても、「日本の方がよい」と答えた人が全体で6割を超える結果となり、外国人観光客が日本の喫煙環境に好感を持っていることが分かる。

 また、「飲食店等において、事業者がそれぞれ喫煙できる店、喫煙できない店、喫煙できる席と喫煙できない席を設けてエリア分けをする店を決め、お客が自分に合った環境の店を選ぶことができる状態」についてどのように感じるか、という問いに対しては全体の5割強が「賛成」と答え、「賛成でない」という立場が全体の22%だったのに対し、多数派を占めた。この調査に関しては「賛成」と答えた人が、欧米・オセアニアが42.0%なのに対して、アジア・南米・その他が57.7%、中国が77.9%となっており、アジア圏の外国人客による分煙賛成度がより高いことが特徴的だ。(引用元:「週刊ホテルレストラン」)

外国人観光客の日本に対する 喫煙環境意識調査

 こういった背景がある中で、外国人客に支持される飲食店ではどのようなサービスで満足度を高めているのだろうか。
 東京・築地の築地場外市場に、「すしざんまい 本店」をはじめとするカジュアルな寿司店を現在9店舗運営している喜代村では、グランドメニューでの英語表記といった外国人向けのサービスを15年ほど前から少しずつ進めてきた。

「ここ数年で、中国をはじめ韓国、欧米、ロシアなどからのお客様も増えたので、現在は外国人のお客様用に英語、中国語(広東語、北京語)、韓国語、ロシア語の専用メニューも用意しています。また、メニューブックでは“お寿司や海鮮丼のおいしい食べ方”をイラストと英語で説明することで、初めての方でも楽しく食事をしていただけるように配慮しています」と話すのは、喜代村 広報・販売促進室副部長の梅原裕史氏。

5ヶ国語メニュー(左写真)と寿司の食べ方をイラストと英語によるガイド(右写真)

5ヶ国語メニュー(左写真)と寿司の食べ方をイラストと英語によるガイド(右写真)

 寿司は、日本を訪れる外国人観光客が食べたいものの筆頭でもある。楽しみに来店する外国人客の期待を裏切らないため、同社では素材の吟味やクオリティの高い味づくりと同時に、料理人、ホールスタッフ共に英語などの語学が堪能な人材を増やし、外国人客とのコミュニケーションをスムーズに行えるようにしたり、喫煙環境を含む店舗の快適さを高める工夫を行うなど、幅広い面でサービス強化に努めている。

 分煙環境の整備に関しては、外国人客への配慮はもちろんだが既存の日本人客にとっても快適な空間をつくることが不可欠。同社では、「客層や立地などを考えたうえで、それぞれの店舗で時間帯分煙、フロア分煙、全席禁煙で喫煙ルームを設置、全面禁煙といったルールを決めている」(梅原氏)という。

 今回、取材を行った築地場外市場の「すしざんまい 別館」は、外国人観光客の割合が高く、来日するたびにここを訪れるリピーターもいるという人気店だ。店舗は24時間営業で、今年の2月までは全フロア(1階、2階、全90席)で7時〜23時までが全席禁煙、23時〜翌7時までを全面喫煙可にしていたが、3月以降は平日(月〜金曜)のみ2階席を7時〜17時まで禁煙、それ以降は全面喫煙可にした。

2階は17時から喫煙席となる

2階は17時から喫煙席となる

「ランチタイムなど日中、休日は、ご家族連れでお越しになることも多いため、店内は全面禁煙にして、吸う方は入口の外に用意されている灰皿をお使いいただくという形に。17時以降は、お酒を飲みながらタバコを吸うお客が増えて喫煙の需要が高まることに配慮して、2階のみ喫煙可にしてフロア分煙の形をとりました」と店長の佐々木優治氏は話す。

店長の佐々木優治氏

店長の佐々木優治氏

タバコの煙が1階に流れないように、換気扇を複数設置している

タバコの煙が1階に流れないように、換気扇を複数設置している

 2階席では、換気扇や空気清浄機を数台設けて、タバコの煙が1階フロアに流れないよう配慮をするのに加え、換気扇やエアコンのフィルターを週に1度は洗浄してニオイが残らないようにするなど、喫煙者にとっても快適な空間を維持できるよう心がけているという。

 同店の分煙環境づくりは、喫煙者・非喫煙者だけでなく、外国人客・日本人客の双方にとっても心地よい店として評価は高い。

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