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繁盛する着想

少しのこだわりが強み「失敗権」を与えて学ばせる

竹市靖公 ブロンコビリー社長

2013年3月4日
竹市靖公 ブロンコビリー社長

たけいち・やすひろ 1943年愛知生まれ。ステーキハウス「ブロンコビリー」を愛知県を中心に東海や関東で70店展開(2012年12月期)。売上高は99億8300万円(同)

 2012年8月に東証・名証1部に変更、業績も過去最高益と好調です。

 少しだけこだわっていると、それだけでお客さんはわざわざ食べに来てくれます。すべてにこだわろうとすると、どうしても価格が高くなってしまう。社内では「高い山に登ると、眼下に雲が広がっていて、ところどころに山頂が出ている。それを全部やるのではなく、いくつか選んで、そこにお金も手間もかけよう」と話しています。

例えば、肉。こだわると言っても、ブロンコビリーの価格帯では松坂牛は扱えません。そこで、オーストラリアの牧場や精肉工場へ視察に行って、自分たちが納得した商品を仕入れています。牧場では、餌となる草を生産者がむしって食べて「おいしいでしょう」とこちらに薦めてきますし、立地も海の風が入ってきて人が住んでも幸せを感じるほど。それで、この肉を使おうと思ったわけです。ご飯も、新潟県津南町の魚沼産コシヒカリをかまど炊きしています。一番出る商品なので、こだわっています。一般の業務用米より価格は2倍しますが、お客さんに喜んでもらえば再来店していただけます。

「ご馳走」とは、馬に乗って珍しいものを探してくるという意味です。価格ではなく、価値で競争をしたいと考えています。

 8期連続で経常利益率が12%以上と、高収益体質でもあります。

 2001年にBSE(牛海綿状脳症)の影響で赤字へ転落したとき、会社のあり方を見直しました。その頃は低価格による拡大路線を採っていて、以前は800円だったハンバーグを400円で提供するなどしていました。ところが、お客さんは値段に関係なく「前よりまずくなった」と不満を漏らして帰ります。また、客単価を下げて利益を増やそうとすると、人時生産性を追わなければならず、現場の負担が膨大になります。

そこで安さだけの競争はやめようと考えて、「ブロンコビリーが得意なことをやる」「お客さんにも働いている人にも喜んでもらう」「客数の増加や客単価の向上を評価軸にする」という3つのフィルターを通じた商売に切り替えたのです。一方で、自社工場でステーキやハンバーグなどを加工して無駄なく材料を使い切るといったコストダウンも続けています。赤字のときに、お金がないと会社が潰れると分かりました。私の理想は経常利益率20%ですよ。

 3月に社長職を長男の竹市克弘氏に譲り、会長に就任します。

 老子の書物に「花は満開になったら散るでしょう。いつまでも咲いていないでしょう」という趣旨の一節があります。自分も喫茶店から始めて東証1部に行かせてもらったし、引き際は自分で決めようということです。若い人は創業者である私に言いにくいことがあるだろうし、逆に私の体が動くうちは若い人にアドバイスできますし。

あとは「失敗権」を与えたかったという思いもあります。何も失敗しないのは、そもそも挑戦しないから。私はBSEで業績がガタガタになった失敗から、いっぱい学びました。若い社長の下でみんなが将来を見ながら挑戦してもらいたい。悪いときだけでなく、いいときでも手を打つ。同じことをやっていてはだめで、いつも変わり続けることが大切です。

(聞き手は戸田顕司=本誌編集長)