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クレーム担当者の奮闘日記

何度謝っても納得しない……

お客を怒らせた従業員の態度とは

2007年10月23日

文=水野 孝彦(日経レストラン)
イラスト=蛭子 能収

このコラムでは、架空の外食企業のクレーム対応担当者の日常を通して、最善のクレーム対応を考えていきます。

○月×日 午前
「すみません」連発は逆効果

「さっきから何を聞いても、『すみません』を繰り返すばかり。お前、本当に悪かったと思っているのか!」。先日、ある店舗でお客からのクレームに「すみません」と何度も謝っていた店長が、そう言って怒鳴られた。

クレーム自体は、料理の中に髪の毛が入っていたという異物混入のトラブルだった。謝っているはずなのに、逆に怒らせてしまった理由は、店長のA君が、ひたすら「すみません」とだけ言い続けたことにある。

人にもよるが、謝罪の言葉は、連呼し過ぎると逆に誠意が感じられなくなる。そして、「異物混入」や「有症苦情(店での食事後の腹痛・嘔吐などのトラブル)」のクレームでは、お客は興奮状態の場合が多いので、ちょっとした不手際が怒りを増幅させる。

「話にならん!」。そう言ってお客は、料理代金を置いて立ち去ろうとした。A君は「代金は結構です。申し訳ありませんでした」と言って、かろうじてお客の手元にお金を戻した。そして、お客はそのまま立ち去ってしまった。

こうした場合、店は髪の毛が入っていた料理の代金を受け取るべきではない。代金を受け取ってしまうと、後でお客が冷静になった時に「お金を不当に取られた」という意識を持ちかねない。後から「カネを返してほしい」という抗議の電話が掛かってくる場合も多い。だから、A君の最後の対応は正しい。だが、そこに至るまでには、もっと上手い対応があったはずだ。

翌日、A君から私のもとにトラブルの報告があった。

「どうして『すみません』しか言わなかったの?」と私。

「とにかく謝罪の言葉を言えば、許してもらえると思ったんです。それに相手がクレーマーだったら、余計なことを言うと揚げ足を取られて、後からお金を払えと言われるんじゃないかと心配で……」とA君。

「『スタッフの一人が帽子をかぶり忘れていました』など、事の経緯を説明して、『私の教育が不十分でした』と責任を認め、謝罪の言葉を伝える。さらに、『今すぐ作り直します』といった対案を示し、納得していただく。その一連の過程が、謝るということなんだよ」と私。

「はい」とA君。

「それと、クレーム客の99%は普通のお客様だ。だから、クレーム対応の大前提は『お客様は正しい』という姿勢で対応することなんだ」。私はA君に改めてクレーム対応の心構えを説き、電話を終えた。

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