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クレーム担当者の奮闘日記

最後の手段は「入店拒否」

迷惑なお客を上手に断る方法

2007年11月8日

文=水野 孝彦(日経レストラン)
イラスト=蛭子 能収

このコラムでは、架空の外食企業のクレーム対応担当者の日常を通して、最善のクレーム対応を考えていきます。

○月×日 午後
お客は選ばざるを得ない

「もう店に来るな、と失礼な店員に言われたわ。その人をクビにしてちょうだい!」。少し前、あるお客から私のもとに、こんな抗議の電話が何回もかかってきた。

このお客は中高年の女性客で、高齢の母親と一緒にショッピングセンターにある当社の店を、定期的に利用してくれる常連客だった。それだけならありがたいのだが、問題は、来店のたびに2~5時間という長時間にわたって母親を店に置いたまま、帰ってこないことだった。

この母親は車イスの利用者で、高齢のため自分一人の力では動けない。長時間放置されると、トイレに行けずに失禁してしまう……。その結果、周囲に異臭を放ち、周りのお客様にご迷惑を掛けていた。実際、ほかのお客からクレームも入っていた。

長時間放置され、恥ずかしい思いをする母親のことを思うと可哀想でならない。それに、娘である女性客にしても日頃、親の面倒を見て疲れていたのだろう。ほんの数時間でいいから一人の時間を持ちたかったという気持ちは分かる。だが、理由はともかく、周囲のお客様に迷惑を掛けている以上、対策を講じないわけにはいかなかった。

店長は娘である女性客に、ほかのお客様の迷惑になっていると話し、長時間母親を置いたままにしないでほしいと相談した。しかし、その後も、娘は同じことを繰り返した。その結果、私たちが出した結論は「ほかのお客様にご迷惑を掛ける以上、利用をお断りせざる得ない」というものだった。

あまり知られていないが、ほかのお客や従業員に迷惑を掛けるなど、店側にとって、やむを得ない理由があれば、そのお客の入店は拒否できる。つまり、店側にも「お客を選ぶ権利」がある。

店のスタッフが「申し訳ありませんが、店の利用をお断りします」と告げたところ、この女性客は激昂し、「母親から離れるのは、ほんの5~10分程度よ」などと、明らかに事実と異なる反論をまくし立てて帰って行った。

その後、お客様相談室室長である私のもとに掛かってきたのが冒頭の電話だ。一番長い時で約90分間話をしたが、会話がかみ合うことは最後までなかった。

昨晩、この店の店長A君と久々に飲みに行き、上記のトラブルが話題になった。「先日はお世話になりました」とA君から改めてお礼を言われた。

「とんでもない。A君こそ大変だったね。でも、これからの高齢化社会、今回のようなトラブルはきっと増えるよ。寂しい話だけどね」と私。その後、A君と私は夜通し語り合った。

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