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クレーム担当者の奮闘日記

食中毒を疑うお客 その心理と対処法

ノロウイルスだ!と言われたら

2007年12月13日

文=水野 孝彦(日経レストラン)
イラスト=蛭子 能収

このコラムでは、架空の外食企業のクレーム対応担当者の日常を通して、最善のクレーム対応を考えていきます。

○月×日 夜
厄介な有症苦情

「ノロウイルスに感染したかもしれないわ。私が病院に行ったら、その事実が発覚して、あなたたちの店は困るんじゃないの?」。

昨日の昼、当社の店で食事をして食中毒になったかもしれない、という女性から電話が入った。いわゆる「有症苦情」と呼ばれるクレームだ。高齢の母親が腹痛や嘔吐に襲われ、自分自身も少し気分が悪くなったという。

昨日、初期対応を行った店長A君からのSOSで、私が対応を引き継ぎ、女性客に電話をかけた。

A君が電話を受けた時、なかなか電話を切ってくれない女性客に彼は「空腹の状態で、脂っこい料理を食べたので、気分が悪くなったのではないでしょうか。食中毒の場合、ほかのお客様からも、同じ内容の苦情が入るはずですが、入っていませんし……」と説得しようとしたが、上手くいかなかった。A君の主張は正論だが、その口調が横柄に聞こえたのかもしれない、と彼自身、後で反省したそうだ。

私はまず、A君の態度が誤解を与えてしまったことを丁寧に詫び、「せっかく当店で食事をしていただいたのに、大変不愉快な思いをさせてしまい、申し訳ない気持ちでいっぱいです」とお伝えした。

有症苦情への対応の基本は、まず、「お客様の体調が心配ですから、すぐに病院に行ってください」などと、相手の体調を最優先に考えている姿勢を示すことだ。

今回の女性客は「食中毒が発覚したら困るんじゃないの?」と聞き方によっては、私たちを脅しているかのような発言をしたが、近頃は普通の消費者でも話がこじれると、この程度の“脅し文句”を言う時代だ。

店側に非がないことを示すには、有症苦情が発生したら、保健所に店側が自主的に報告すること。現実問題として中小の飲食店には、それくらいしか「身の潔白」を示す方法がない。

「当店で食事をして体調を壊した、とのお申し出があったことは、既に保健所に連絡いたしました。食中毒が発生していれば、店は営業停止になるはずです。とにかく、お体が心配ですから、どうか病院で診てもらって下さい」と私はお伝えした。

その後の話は、ほとんどA君の対応への非難だった。食材の貯蔵や調理、衛生管理の仕組みについても、分かりやすく説明したのだが、あまり興味がないようだ。この女性客が今、本当に怒っているのは吐き気などではなく、A君についてなのだろう。体調不良が深刻なら、私に言われるまでもなく病院へ行くはずで、それをせずに私に延々とA君の非難を続けている。それは、女性客自身と母親の体調が既に回復しつつある、という証拠でもある。大事に至らず何よりだったが、店側の対応については今後の反省材料としたい。

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