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クレーム担当者の奮闘日記

飲食店を狙う詐欺の手口(前編)

悪い奴らから店を守れ!

2008年1月17日

文=水野 孝彦(日経レストラン)
イラスト=蛭子 能収

このコラムでは、架空の外食企業のクレーム対応担当者の日常を通して、最善のクレーム対応を考えていきます。

○月×日 午後
同業者を名乗り……

「料理の中にガラスが入っていたせいで口の中を切ったぞ」。先日、ある店舗で中年男性客が店長のA君を呼び付け、口の中から取り出したガラス片を見せた。

「バックヤードで話そうか」。この男性客はA君を連れ出すと、「ガラス片を一部飲み込んだかもしれない」などとA君を責め立てた。

「お客様。すぐに病院へ行ってください」とお願いするA君。男性客はその言葉をさえぎり、激しく叱責した。

「オレも飲食店の店長だけど、こんないい加減な店は初めてだ。余程、汚い厨房なんだろう。同業者として恥ずかしい。こんなことが世間に知れたら大変だぞ」。

「ことが重大なので、連絡先を伺い、上司と相談してから、改めて謝罪に伺いたい」とお願いするA君。

すると、男性客は「店の責任者はお前だろ。上司なんかに謝ってもらう必要はない。後から上司が見舞金や商品券を持ってきても絶対に受け取らないからな」と言い出した。

「早くこの場から逃れたい……」。一方的な叱責が続いたことで、A君は心理的に追い詰められていた。

「どうやって責任を取るんだ?」。男性客はそれとなく店長に金品を要求してきた。そして、さりげなくこう告げた。「きちんと誠意を示せば、今回のことはオレの胸の内にしまっておいてやるよ」。

この一言にA君はすがり、手持ちの現金すべて(3万円)を男性客に差し出してしまった。「お前の気持ちはよく分かった。許してやるよ。しかし、こんなことがまた起きたら大変だ。ガラス片が混入した原因を解明して、再発防止策を考えたらここに電話してくれ。お前のためだからな」。そう言って、名刺を差し出し、男性客は立ち去った。

そして今日、A君がその名刺に書かれていた店に電話をかけると、店長は先日の男性客とは全くの別人だと分かった。A君はだまされたのだ。男性客の正体は詐欺師で、ガラス片も自分で店に持ち込んだに違いない。人の名刺を集め、他人になりすますのも詐欺師の手口の一つだ。

「室長。申し訳ありません……。自分の失態を話すのは恥ずかしいですが、各店に知らせて警戒を呼びかけてください」と悔しそうに話すA君。

詐欺にだまされない最大の防御策は、詐欺師の手口を知ることだ。

「分かった。次の店長会議で飲食店を狙う詐欺の手口をレクチャーしよう」。私はそう言って電話を終えた。

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