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クレーム担当者の奮闘日記

飲食店を狙う詐欺の手口(後編)

悪い奴らから店を守れ!

2008年2月14日

文=水野 孝彦(日経レストラン)
イラスト=蛭子 能収

このコラムでは、架空の外食企業のクレーム対応担当者の日常を通して、最善のクレーム対応を考えていきます。

○月×日 午後
従業員の財布も狙われている

「振り込まれた家賃が約束より少ない。すぐに払ってくれ」。B店長の元に、家主を名乗る男から電話が入ったのは2日前のことだ。

「今までそんなトラブルなかったのにおかしいな。上司に報告しなければ」。

そう思っていたB君のところに、今度は本部スタッフを名乗るCという男が電話をかけてきた。Cは、家主から本部に「いい加減な対応は困る」と抗議があったと言いながら、さりげなくレジに入っている金額を尋ねてきた。B君はレジには釣り銭用の現金が最低限の金額だけ置いてあると、何の疑問も持たずに話した。

「対応を本部で協議するから、しばらく待っていてくれ」。そう言ってCは電話を切った。ややこしい話になってきた、と困惑するB君。

そこに本社の役員を名乗る男Dが電話をかけてきた。「振り込んだ額が家賃より少なかったことを確認した。家主はすぐお金が欲しいと言って聞かない。レジの現金を支払いに回すことはできないから、悪いが君個人のお金で立て替えてくれないか? C君がそちらに向かったからお金を渡してほしい」

Cは、B君から受け取った現金を持って家主に謝りに行くという。B君は言われるがままに銀行へ向かい、自分の預金口座から10万円を引き出し、Cに指定された場所へ出向き、現金を手渡した。

以上が昨日、B君がだまされた詐欺の経過だ。直属の上司にCやDとの一件を話すまで、B君は自分がだまされていることに気が付かなかったという。電話で家主を名乗った男。本部スタッフを名乗るC。役員を名乗るD。3人は詐欺師のグループで、B君は罠にはめられた。

本部スタッフを装って、何らかの理由を付けて従業員を店外に呼び出し、カネをだまし取る詐欺を「おびき出し」と呼ぶ。詐欺師たちが最初に狙うのはレジの現金。それが取りにくい、あるいはもっと取れそうな場合には、従業員のポケットマネーを狙ってくる。

B君も冷静に考えることができればだまされることはなかっただろう。大体、家賃を一般社員に立て替えさせる会社なんて聞いたことがない。

しかし、B君は本部に迷惑を掛けていると思い込み、慌てた。その上、本部スタッフを名乗るCと取締役を名乗るDは、「家主とのトラブルは深刻で、素早く対応しないと退店もあり得る」と、トラブルの重大さや緊急性を強調した。こうしたプレッシャーが、B君をパニック状態に陥れ、冷静な判断力を奪ってしまった。詐欺師たちが得意とする手口だ。

おびき出しの手口は、より巧妙になってきているという。私は同業他社の情報を集め、従業員向けの対策をまとめることにした。

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