「日経レストランONLINE」は、「日経レストラン」の休刊に伴い、3月末日をもって更新を休止することになりました。長らくご支援を賜りました皆様に厚く御礼を申し上げます。

クレーム担当者の奮闘日記

お客様の衣服を汚してしまったら

カネで解決は大間違い!

2008年4月10日

文=水野 孝彦(日経レストラン)
イラスト=蛭子 能収

このコラムでは、架空の外食企業のクレーム対応担当者の日常を通して、最善のクレーム対応を考えていきます。

○月×日 午後
土下座までさせられた末……

「彼女からもらった大事な服を汚しやがって、弁償しろよ!」──。

ある飲食店チェーンで、従業員が配膳中に誤ってコップを倒し、ドリンクがテーブルや床に飛び散るという事故があった。すると、この席に座っていたお客が「服を汚したな!」と言って激昂した。

当初、このお客は「クリーニング代を払え」と店長に迫ったのだが、それが認められると突然、要求をエスカレートさせて「弁償しろ」と言い出した。もっとカネを取れると思ったのだろう。要求してきた金銭の額は、着ている衣服の値段と釣り合わない高額なものだった。

お客様の衣服や所持品を誤って汚してしまうトラブルを「衣服汚損(おそん)」という。衣服汚損が起きた場合、汚してしまったものを元の状態に戻す「原状復帰」に必要な費用を店側が負担するのは当然だが、それ以上の金銭的な負担をする必要はない。今回のケースならクリーニング代金を支払えば十分だし、汚れが落ちない場合は、汚れた服と同程度の額の弁償をすればよい。

店長はそうした衣服汚損時の対応ルールに従って、法外な買い替え代金を支払うことを拒否した。すると、このお客は「上司に連絡させろ」と捨てゼリフを残して立ち去った。その後、店舗からの連絡で駆け付けたスーパーバイザー(SV)が、そのお客に呼び出された。合流場所はある町の路上だ。住所を知られたくなかったのだろう。

SVは店側の方針について説明したが、なかなか納得してもらえない。あまりにも執拗な追及に最後は土下座までさせられた末、交渉は決裂した。

しかし、このお客もなかなかあきらめない。本社に連絡が入り、今度はお客様相談室が対応することになった。しかし、何回電話のやり取りをしても話は平行線をたどった。

そこでお客様相談室室長は、直接お客様に会うことにした。服を汚してしまったことを詫びると共に、弁償には応じられない旨をきっちり伝えるためだ。だが、アポイントを取って、待ち合わせの場所に行ったものの、相手は現れない。そのまま、電話連絡もできない音信不通状態になってしまった。カネを取れないとあきらめ、最後に嫌がらせをしたのだろう。

私はこの話を聞いて、次回の店長会議で、この事例を基に衣服汚損時の対応について、話し合うことにした。SVや相談室が費やした時間も含めたコストを考えれば、さっさと衣服の買い替え代金を支払い、カネで解決した方が安上がりなのかもしれない。しかし、それで味をしめれば、わざと服を汚して言いがかりを付けるクレーマーが続出するだろう。苦しくてもどこかで一線を引くしかないのだ。

Next: 衣服汚損対応ルール

次のページへ
どうしてくれる!? 店長1万人のクレーム対応術

どうしてくれる!? 店長1万人のクレーム対応術

37のトラブルから学ぶクレーム対応術

外食大手23社が磨きあげたトラブル解決の決定版!
よくあるクレームへの対策から悪質なクレーマーの撃退まで、豊富な事例と解決策がこの1冊に。