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クレーム担当者の奮闘日記

料理を食べて歯が欠けた!?

意外な異物混入クレームへの対処法

2008年6月12日

文=水野 孝彦(日経レストラン)
イラスト=蛭子 能収

このコラムでは、架空の外食企業のクレーム対応担当者の日常を通して、最善のクレーム対応を考えていきます。

○月×日 午後
結構ある歯のトラブル

「この料理、何か金属が入っているんだけど」。お客様がそう言って店員を呼び止めた。確かに、お客様が指差すそれは、小さな金属片のようだったが、皿を凝視した店員はあることに気が付いた。

「お客様、これは歯の詰め物ではないでしょうか」。

「えっ」。そう言って口の中を確認し始めたお客様は「あっ」と言って詰め物がはずれた歯があることに気が付いた。

これは今日の午前中に発生したトラブルだった。この一件は無事に解決したが、食事中にお客様の歯の詰め物が取れて料理やドリンクの中に入り、お客様が金属や石と間違えるというクレームは意外に多い。

もっともお客様自身の歯の一部が欠けているわけだから、異物の正体が歯の詰め物だと分かれば、それ以上、話がこじれることは少ない。それでもまれに、納得いただけない場合がある。そうした場合には、お客様相談室の担当者が、その金属や石を知り合いの歯科医師に見せて、「歯の詰め物」だという“お墨付き”をもらってお客様に説明する場合もある。歯の詰め物に使う素材は特殊なので、専門家なら簡単に見分けが付くのだ。

「料理が硬かったので、歯が折れた」とか「欠けた」というクレームもある。

以前、あるチェーンで「野菜の煮物で歯が折れた」というクレームがあった。硬い異物が混入していない“正常な”料理を食べていても、お客様の歯が折れるということはあり得る。だがそれはお客様の歯に問題があるためで、食事の最中に歯が折れたのは偶然に過ぎない。

異物が混入し、それが原因になったのならともかく、そうでなければ、店側が金銭的な補償をする必要は無い。歯科医院での診療をお勧めし、そこで歯が折れた原因について説明を受ければ、大抵は店側に非が無いことを理解してもらえる。

ただし、店側に非が無いとしても、歯のトラブルで苦痛を受けたお客様への共感を示すことは大切だ。体調や気持ちを気遣う言葉をかけられるかどうかで、お客様の印象は随分違う。

あるチェーンで、「購入したアイスクリームをカチカチに凍らせて食べたら、歯が折れた」と申し出たお客様に、「必要以上に冷やすからですよ」と突き放すような返答をした店長がいた。その態度にお客様は怒り、2次クレーム(クレームへの初期対応の不手際で 生じるクレームのこと)になってしまったという。いたわりの言葉をかけていれば、結果は随分違ったはずだ。

これはどんなクレーム対応でも同じだが、クレームがこじれた場合には、対応する担当者や時間を変えることだ。お客様に冷静になっていただくことで、振りあげた拳を下ろすタイミングを与えることができる。

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