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クレーム担当者の奮闘日記

なぜクレームがこじれるのか?

失敗事例の徹底研究がカギ

2008年6月26日

文=水野 孝彦(日経レストラン)
イラスト=蛭子 能収

このコラムでは、架空の外食企業のクレーム対応担当者の日常を通して、最善のクレーム対応を考えていきます。

○月×日 午後
思い込みが招く大トラブル

ある店舗に、ランチタイムのお弁当をよく買いに来る常連客がいた。このお客様が弁当の中に入っていた異物を誤って噛み、歯の具合が悪くなった、と店長に訴えてきたのは3カ月ほど前のことだ。

その異物とは、店舗で食材を焼くために使用した木炭だった。店長は、お客様に謝罪し、健康保険の適用範囲内で治療し、診断書を持ってきてくれれば、治療費を店側の経費で負担すると約束した。

その後、お客様からは何の連絡もなかったのだが、最近になって突然現れ、ウン十万円という高額の治療費を請求してきた。店長が「保険の範囲内とお願いしたはずです」と言っても、お客様は「そんな話は聞いていない! 私がウソを言っているとでも言うの?」と一歩も引かない……。

これはある外食チェーンで発生したクレームの事例だ。今日は外食チェーンのお客様窓口担当者の勉強会の日。今回のテーマは、クレーム対応の失敗事例だ。クレームがこじれた事例を皆で話し合うことで、クレーム対応に失敗するパターンを研究し、対応ミスを減らすのが目的だ。

クレーム対応でこじれるケースには、複数のミスが重なる場合が多い。前述の事例の場合には以下のようなミスが存在した。

* * *

【作業手順を守らない】店舗では炭が弁当に入らないようにするための作業手順があったのに、忙しいからとそれを怠った。

【経験からの油断】このお客様は常連の高齢の女性。一般的に、こうした人にクレーマーは少ないから無茶な要求はしないだろうと安心してしまった。さらに、この店の店長は以前、異物混入でお客様が歯を傷めるというトラブルを経験しており、その時に掛かった費用は1万円程度。最悪の場合でも負担は知れていると判断してしまったことも痛かった。

【状況確認を怠った】店で提供した食事が原因で歯の治療が必要になった以上、お見舞いの意味も込めて店側から連絡を取り、歯医者での診察結果や治療の方針を早めに確認しておくべきだった。それを怠ったために、お客様と歯医者が治療方針を勝手に決めて治療を繰り返し、請求金額が膨れ上がっていった。さらに、このお客様の行動はエスカレートし、「別の日に購入した弁当にも異物が入っていて、ほかの歯の具合も悪くなった」と、店長には連絡せずに独断で、ほかの歯まで治療していた。連絡を取っていれば、こうした勝手な行為をもっと早い段階で止められたかもしれない。

* * *

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