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クレーム担当者の奮闘日記

身内の悪ふざけが店を潰す!?

ネット時代の盲点

2008年7月17日

文=水野 孝彦(日経レストラン)
イラスト=蛭子 能収

このコラムでは、架空の外食企業のクレーム対応担当者の日常を通して、最善のクレーム対応を考えていきます。

○月×日 午後
店ぐるみで飲酒運転!?

「おたくの店、どうなってんの?」──。先日、ある店舗について問い合わせの電話やメールが次々に寄せられる事件が発生した。

事の発端は、ある店舗のアルバイトが自身のSNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)に、店の同僚との飲み会写真を公開したことだった。

その写真は閉店後の懇親会風景。SNSに書き込んだ本人を含め、酒を飲み、酔っ払っている状態だと一目で分かる。そして、彼はこう書いていた。

「みんなを乗せて僕がクルマを運転して帰りました」──。

何人かは店のユニフォームを着たままで、名札が写っている人もいる。見る人が見れば、どこのチェーンのどの店かもすぐ分かる。

つまり、SNSへの書き込みは「店ぐるみで飲酒運転をしました」と宣言しているのに等しい。言うまでも無く、絶対にあってはならないことだった。

SNSを見て連絡してくださった方々の情報から、私は店とスタッフを特定。すぐさま事実確認に動いた。写真を掲載したアルバイトスタッフはもちろん、懇親会に参加したスタッフ全員から、その日のことを聞き出してみたところ、幸いなことに飲酒運転は事実無根だったことが確認できた。ちゃんとお酒を飲まなかったスタッフがいて、その人がスタッフたちを自宅まで送り返していたのだ。

では、何でそんなデタラメを書いたのか、と本人にも問い詰めたのだが、自分でもよく分からないという。おそらく「飲酒運転をした」と書いた方が、話が盛り上がると考えたようだ。その書き込みを第三者が見ることで、どんな結果を招くかまでは、あまり深く考えていなかった。

当然、SNSへの書き込みは削除。書き込みを行ったスタッフには、厳しい社内処分も課さざるを得ない。

一方で、書き込みについて知らせてくれた人には調査の結果、飲酒運転は事実無根であったこと、また情報を提供していただいたおかげで、当社が風評被害を受けないで済んだことについて、お礼の気持ちをお伝えした。

昨年末、動画共有サイトに大手ファストフードチェーンのアルバイトスタッフが、食材を使って悪ふざけをしている画像を投稿したり、SNS上にゴキブリを料理と一緒に揚げたとウソを書き込んだりして、大騒ぎになったのは記憶に新しい。また少し前から、お客様を蔑視する内容の書き込みで、インターネットのユーザーたちに激しく非難されるケースもよく耳にする。

ネットを通じて広まることで、アルバイトスタッフの悪ふざけも、甚大な風評被害を生む可能性がある時代になっているのだ。

前述のように、従業員が店の信頼を失墜させるようなデタラメの記述をし、それがインターネット上に広まり、さらにはメディアに取り上げられることで、膨大な量の「抗議メール」が、チェーン側に寄せられる場合がある。

メールでの問い合わせにはメールで回答するのが一般的だが、こうした場合、そのすべてに返事を送るのは事実上不可能だ。そこでホームページ上で調査結果や会社の方針について掲載し、個別の回答は見送ったケースがあったそうだ。個別の回答がなかったことに怒り、再度抗議のメールを送ってきた人は、ほとんどいなかったという。

抗議のメールを送ってくる人たちのほとんどは「義憤」から。ホームページなどできちんと事の経緯や善後策を説明し、企業として社会的責任を果たしていることを示せば、納得してくださるということだろう。

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