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クレーム担当者の奮闘日記

あの店長をクビにしろ!

2008年10月9日

文=水野 孝彦(日経レストラン)
イラスト=蛭子 能収

このコラムでは、架空の外食企業のクレーム対応担当者の日常を通して、最善のクレーム対応を考えていきます。

○月×日 夜
逆恨みでクレーム殺到!

「口の利き方が、お客をバカにしている」「目つきが悪く、いつもにらんでくる」「態度が悪いので辞めさせてほしい」──。

これはほんの数日の間に、ある店の店長A君について、お客様相談室に電話で寄せられたクレームの数々だ。3人のお客はA君を名指しで非難したが、誰も自分たちの名前を名乗ることはなかった。

A君は優秀な店長で、これまで目立ったミスもない。にもかかわらず、これだけクレームが集中するというのは、異常事態だ。私はA君にお客様相談室に来てもらうことにした。

目的は、電話での会話内容を直接聞いてもらうことにあった。事実誤認を防ぐためにクレーム対応の会話を録音しているお客様相談室は多い。それが糸口になればと考えたわけだ。

「聞き覚えのある声のような……」とA君。しばらく考えて、ある事件を思い出した。

「この声の方々は多分、当店常連の女性グループ客です。先日いらっしゃった時に、持ってきたお弁当を食べようとする方がいて、『持ち込みはご遠慮ください』とお願いしました。でも、それだけでここまで恨まれるなんて……」。

そのグループ客は昨日も、A君の店を利用したそうだ。要はA君のことは気に入らないが、店は使いたいということなのだろう。無論、A君の推理が正しければなのだが、クレーム発生のタイミングから見ても、ほぼ間違いないはずだ。

「どんなに頑張っていても、誤解されてしまうことはある。問題はこれからどうするかだね」と私。

「はい。でも、どうすれば?」とA君。私はA君に策を授けることにした。

「『いつもご利用いただきありがとうございます』と、いつも以上の笑顔と親しみを込めた声で、このお客たちにあいさつをしてごらん」と私。

「なぜです?」とA君。

「クレーム客をファンに変えるためさ。君だって、そのグループ客を出入り禁止にしたいわけじゃないだろう」。

「そこまでは」とA君。

「それならば、関係を改善する努力をこちらから始めるしかない」と私は応じた。

実際、こうした配慮で、店長の接客態度を非難していたクレーム客が、店長のファンに変わり、接客についてお褒めの言葉を頂いたこともある。

その後、前述のグループ客とA君はお互いあいさつをする間柄になったそうだ。予想通り、A君へのクレームもピタリと止んでしまった。

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