「カネを払え!」にどこまで従うべきか

法律面から考えるクレーム対応(前編)

2009年10月15日

イラスト=蛭子 能収

○月×日 セミナーより(1)
法律違反と
損害賠償は別物

「お前の店の料理を食べてから体調がおかしくなった。慰謝料を払え!」─。

店で賞味期限切れの食材を使っていたことが発覚した直後、お客からこうしたクレームを受けた場合、言われるがままに、損害賠償に応じなければならないのだろうか?

答えはノーだ。

食事と体調不良との間に因果関係があることが証明できないかぎり、損害賠償に応じる必要はない。賞味期限切れの食材を使うことは、食品衛生法に抵触する可能性がある(「賞味期限切れの食材使用=食品衛生法違反」ではない)が、その場合は行政から飲食店にペナルティが科せられるのであって、お客への損害賠償には直結しない。

ちなみに、お客側が損害賠償を求める法的な根拠は民法415条の「債務不履行」や同570条の「売主の瑕疵担保責任」(編集部注:欠陥のあるものを売ったら、その責任を取らなければならないという意味)。賞味期限切れによる体調不良が立証された場合には、商品代金の返金はもちろん、治療費や慰謝料などを支払うことになる。

厄介なのは「拡大損害」といわれるもので、提供したサービスで生じた損失と因果関係が認められる損害については賠償しなければならない。例えば上記の場合なら体調不良で仕事を休んだ間の賃金補償や精神的な苦痛を受けたことに対する慰謝料などがそれに当たる。また体調不良で旅行をキャンセルせざるを得なかったときのキャンセル料金などもそうだろう。難しいのは、どこまで因果関係があると考えるかだ。

もっとも、「仕事を休まず、商談がまとまっていれば100万円の追加ボーナスがあったはずなので、それを支払え」といった常識的に考えて関係性が薄い要求まで真に受ける必要はない。もめた場合には弁護士や保険会社の担当者など専門家とよく相談することが大切だろう。また飲食店向けの保険に入っていると何かと安心だ。

やや難しい話をしてきたが、以上は私たちが弁護士を招いて、勉強会で聞いた話だ。

クレーム対応で大切なのは、会社や店の側のミスで損なわれたお客さまの気持ちを癒すことであって、法的に是か非かを第一に考えるべきではないという意見もあるかもしれない。しかし、自分たちのクレーム対応の法的根拠を理解したうえで、お客と話をするかどうかで、言葉の重みも違ってくる。それにクレーマーと対峙する「有事」には、法律面の知識は強力な武器になる。

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