
お客様の「大丈夫」は大丈夫じゃない!
やってはいけない接客特集
イラスト=蛭子 能収
○月×日夕方
「大丈夫」って
言ったのに……
「申し訳ありません」。ある学生アルバイトが料理提供中にコップの水をこぼし、30代男性客の服を少し濡らしてしまった。
学生アルバイトが必死に謝ると、お客は「大丈夫。水だから」と言って、すぐに許してくれたそうだ。ほっとしたアルバイトは、そのまま何事もなかったかのように仕事を続けた。
ところが30分後、そのお客はレジの前で突然、烈火のごとく怒り出した。「この店はどうなっているんだ。お客の服を汚しておいて、責任者が謝りにも来ないのか!」─。店中が、静まり返る。
店長は慌ててレジに駆け付け、何回も頭を下げた。しばらくして、どうにか許してもらえたが、その光景をひとり呆気に取られて見ていたのが、当事者の学生アルバイトだった。
これはよくあるトラブルの一つだ。お客が「大丈夫」と言ったのは、学生アルバイトを気遣っているだけで、本当の意味で許したのではない。内心は店の責任者からも謝ってもらえるのを待っている。
ところが店はそれに気が付いていない。そんなモヤモヤを心に抱えたまま我慢して食事を続け、最後、レジの前まで来て、ついに怒りを爆発させてしまったわけだ。
「こうしたトラブルは本当に多い」と話すのは、ある外食チェーンでお客様窓口担当を務めるAさん。そこでAさんのチェーンでは従業員に、何かトラブルがあったら、どんなささいなことでも必ず店長や時間帯責任者に報告するように指導しているそうだ。
ところが、お客に「大丈夫」とか「気にしなくていいよ」と言われると、従業員が安心してしまい報告を怠ることがよく起きる。その結果、前述のようなトラブルになってしまうわけだ。
「だから、お客様に『大丈夫』と言われたら、『大丈夫じゃない』と言われていると思いなさい。『気にしなくていいよ』と言われたら、『気にしなさい』と言われていると思いなさい、と常々言っています」とAさんは教えてくれた。
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