
解決したつもりが訴えられた
クレーム担当者たちの奇妙な体験
イラスト=蛭子 能収
○月×日午後
少額訴訟の
被告に突然なって
言いがかりにしか思えないクレームを訴える相手に、2回ほど電話でそれぞれ20分くらいずつ応対した。話は平行線で終わったが、3回目の電話はかかってこなかった。相手もあきらめ、もう解決したものだと思っていたら、ある日、裁判所から書類が届き、会社の代表として裁判所に出向くことになった─。
そんな珍しい経験をしたのが、ある外食チェーンのお客様窓口の責任者Aさん。クレーム相手が利用したのは「少額訴訟」という制度だ。
少額訴訟の特徴は60万円以下の金銭支払いを求めるトラブルに限定され、簡易裁判所での1回の審理で判決を出すことにある。事前に原告と裁判所、被告と裁判所で訴状(原告の主張)や答弁書(被告の主張)をやりとりする。ちなみに原告といえば被害者、被告といえば加害者のイメージがあるが、これは純粋な裁判用語なので、善悪とはまったく関係ない。
弁護士を頼まないで済むので、裁判に必要なコストは非常に少なく、裁判を始める際の心理的な敷居は低い。ただし、控訴(第一審への不服申し立て)ができず、事実上の一発勝負になる。そのため、大手外食チェーンの場合、通常の民事訴訟に移行させて、「まさか」の敗北を回避しようとするのが一般的だ。Aさんの会社も大手企業なのだが、役員会でも十分に議論し、今回は少額訴訟を受けて立つことにした。
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