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魚を巡るホントウの話

ヒラメは「裏」、ブリは「身の色」で 天然と養殖の違いが分かる

2010年3月23日

ヒラメは白身魚の中では旨みが豊富。イノシン酸が多く、グリシン、アラニンなどのアミノ酸をバランスよく含んでいる。水深100~200mの砂泥底に生息し、春から秋にかけて岸の近く、水深30~70mのところに移動して産卵する。孵化(ふか)した稚魚は、ほかの魚と同様に眼が左右に一つずつあるが、全長8mm前後になると右眼の移動が始まり、14mm前後で頭部の背側の縁に達し、しばらくすると両眼が体の左側に並ぶ。

養殖が盛んで、流通している約半分が養殖物。天然とそれ以外は一目で見分けることができる。眼のない白っぽい側に黒い斑紋があるものは養殖か放流魚だ。

ヒラメ

放流魚とは5cm前後になるまで育てた後、海に放流したもの。一方、成魚になるまで養殖場で育てたものが養殖魚である。養殖魚と放流魚に斑紋が現れるのは、自然界で育ったヒラメと違って、砂に潜れないためのストレスなどが原因であることが分かっている。

味の点では、養殖ヒラメは脂肪が多いのに対し、放流ヒラメは、自然界で成長するため天然ヒラメと変わらない。しかし、斑紋があって見た目が良くないため天然物より安価な価格で取引されることもある。現在、この斑紋が出ないような育て方の研究が行われている。

なお、刺身、寿司ダネとして珍重されるエンガワは、ヒラメなどのカレイ類の背ビレと臀(シリ)ビレのひれすじを動かす一連の筋肉の通称だ。ヒラメは背ビレ、臀ビレをよく動かすので、これらの筋肉がよく発達する。コリコリした歯応えはコラーゲンが多いため、旨みを強く感じるのは脂質が非常に多いためだ。

ブリ

ブリ

ブリは冬に備えて脂肪を蓄えるために、秋から冬にかけて美味しくなる。厳寒の時期のものは寒ブリと呼ばれて珍重される。この魚は養殖が盛んで、流通するブリの6割以上が養殖物だ。養殖ブリは早く成長させるためにエサを与え続けるので、天然ブリよりも脂肪の量が多く、身質が軟らかくて鮮度が落ちやすい。生簀(いけす)で育てるためにヒレが少しすり切れており、脂肪が多いので身の色が天然ブリよりも少々白っぽい。

美味しいブリを見分けるには、皮にツヤがあり、ウロコがきれいで身に張りがあるものを選ぶこと。切り身は、切り口の色がきれいで、血合いの色が鮮やかなものが新鮮だ。

ご存知の通り、ブリは成長するに従って呼び名が変わるので出世魚と呼ばれるが、名前は地方によって異なる。関東ではワカシ→イナダ→ワラサ→ブリと変化し、関西ではモジャコ→ワカナ→ツバス→ハマチ→メジロ→ブリとなる。

坂本 一男

水産学博士。水産物市場改善協会・おさかな普及センター資料館館長。魚のエキスパートを育てる日本おさかなマイスター協会の講師

文=芦部 洋子