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魚を巡るホントウの話

魚体の赤さが天然の印 養殖も見栄えが向上

春が旬の「マダイ」

2010年4月12日

タイ科の魚は温帯から熱帯の沿岸の水域に生息。世界中で約100種が知られており、日本には13種ほど分布している。その中でもマダイは、赤色の体色と平たい楕円形の体形が特に好まれ、昔から祝い事に用いられてきた。

日本人との付き合いは古く、奈良時代に書かれた「古事記」「日本書紀」にもマダイは登場するほど。ただし、この時代の祝い事にはコイが利用されることが多かった。中国文化の影響もあり、滝登りに象徴されるコイの力強さが好まれていたようだ。時代が下って鎌倉時代になると、台頭してきた武士階級がマダイの赤色と形をめでたいものとして祝いの料理に用いるようになり、江戸時代になると身分の上下に関係なくマダイを尊ぶようになったという。

マダイの赤い体色は、カロテノイドの一種であるアスタキサンチンに由来する。このアスタキサンチンは海老、カニなどの甲殻類に多く含まれ、これらをエサにすることでマダイは赤くなる。この赤色が鮮やかで、身に張りがあり締まっているものが、鮮度が良く上物といえる。

マダイは養殖や放流も盛んだ。養殖の主な産地である愛媛県は全生産量の約半分を占め、三重県、熊本県、高知県、長崎県などでも養殖は行われている。

養殖が始められた昭和30~40年代頃は、養殖マダイの体色は天然物と比べ、黒さが目立った。これは、一つには日焼けによってメラニン色素が沈着するためだ。天然マダイが生息するのは水深30~200mだが、養殖場の深さはせいぜい10m程度であり、水中に日光が入ってしまうのだ。また、エサからアスタキサンチンが十分に取れなかったのも、黒っぽさの原因と言われる。

現在は養殖場を日除けシートで覆い、エサも工夫しているため、以前ほど黒さが濃くない。しかし、天然物とまったく同じ生育環境を作ることはできないため、比較すると、天然の方が依然として明るい赤色をしているのが分かるだろう。

養殖マダイの刺身には黒い筋が入っていることがあるが、これも日光の影響によるもの。さらに、養殖マダイは尾ビレが変形しているなどの特徴もある。

なお、マダイと姿形が似ていて間違いやすい魚にチダイがあるが、チダイはエラぶたの後ろの縁の膜の赤い部分が幅広い。マダイは尾ビレの後ろの縁が黒い。また、尻ビレの軟条の数がチダイは9本、マダイは8本なので、見分けられる。

答えB(エラぶたの端の赤い部分が幅広くないし、尾ビレの後ろの縁が黒い。※Aはチダイ)

坂本 一男

水産学博士。水産物市場改善協会・おさかな普及センター資料館館長。魚のエキスパートを育てる日本おさかなマイスター協会の講師

文=芦部 洋子
※ チダイの写真は、水産総合研究センター提供