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魚を巡るホントウの話

「魚離れ」は飲食店のチャンス

2010年4月26日

文=芦部 洋子

「魚離れ」が声高に叫ばれている。水産庁は2007年5月、水産白書において、かつてないほどの魚離れが進行中と発表した。1995年から2004年の9年間で、すべての年齢層において魚介類の摂取量が減少。さらに以前は肉よりも魚介類の摂取量が多かった40代で魚介類が肉を下回り、50代以上の世代でも魚介類の摂取量が減っているという。

食品群別摂取量の年次推移を見ても、95年以降、魚介類の摂取量は減る一方。総務省「家計調査年報」によると、家庭での生鮮魚介類の購入量も減っている。

しかし、「魚離れ=魚嫌い」ではない。東京海洋大学の馬場治教授は、「確かに日本人の魚の摂取量は減っている。しかし、魚が嫌いになったわけではなく、食材の種類が豊かになった分、魚を食べる量や回数が減っただけ」とみる。

魚の摂取量は減る一方

また、家庭での生魚の調理が減っていることは明らかだが、スーパーなどでは魚介類を使った惣菜や、ウナギの蒲焼きなどの水産物加工品は売れ筋。それらの消費量を表すデータがないだけだ。

さらに、水産白書では、「子供の魚嫌い」を魚離れの一因に挙げているが、小学生が一番好きな食べ物は寿司というデータもあり(下)、一概に子供が魚嫌いと言い切ることはできない。「『家で調理しない代わりに、外食では魚を食べたい』『好きな調理法なら魚を食べたい』といったニーズは大きい」と馬場教授は考える。

小学生の好きな食べ物No.1は「寿司」

消費者の4人に1人が
「魚介料理を増やしてほしい」

これを裏付ける調査結果が、大日本水産会の「水産物を中心とした消費に関する調査」(2006年3月)に見られる。これによると、外食への要望として、消費者の約25%が「魚介料理を増やしてほしい」と答えた。また、約34%が「外食で魚介料理の主菜を食べる回数を増やしたい」とし、「減らしたい」の0.4%を大きく引き離した。

「魚も野菜同様、旬を先取りして提供する傾向があるが、旬の時期こそ脂が乗って美味しく、価格も安い。旬の魚を利用して、若年層も引き付けられるメニューを作れば、他店との差別化にも役立つ」と馬場教授。実際、これを実践して成功している例もある。関東で海産物居酒屋を展開するテラケンだ。

同社の小野寺嗣三商品部長は、「家庭で魚を食べなくなった分、外食では魚料理を食べたいという意識が高まっていると感じる。旬の魚メニューは特に人気が高く、サンマ祭りでは来店客の5割が、初鰹では4割もの客がこれらの魚を注文する。煮魚は調味料にコストがかかる割には若年層に好まれないが、刺身、焼き魚はこの層にもウケが良い」と話す。

また、魚介類中心の居酒屋チェーンを展開する東京ジューキ食品の寺山尋道専務は、「魚の魅力は肉と違って種類が豊富で、季節の変化を演出しやすい点。脂肪分が少なくヘルシーな点も健康ブームの今、追い風だ」と言う。魚離れを逆手にとって、飲食店ならではの美味しい魚料理を提供すれば、差別化や新たな顧客獲得のチャンスになりそうだ。

坂本 一男

水産学博士。水産物市場改善協会・おさかな普及センター資料館館長。魚のエキスパートを育てる日本おさかなマイスター協会の講師

文=芦部 洋子