「日経レストランONLINE」は、「日経レストラン」の休刊に伴い、3月末日をもって更新を休止することになりました。長らくご支援を賜りました皆様に厚く御礼を申し上げます。

魚を巡るホントウの話

「サケ」は「マス」と同じ?「天然」「養殖」の違いは?

2010年5月10日

私のところに寄せられる質問の中でも特に多いのが「サケとマスの違いは?」という問い合わせだ。実はサケとマスには生物学的な違いはなく、サケ科に属する魚に、あるものには「○○サケ」、あるものには「○○マス」と名前を付けて呼んでいるだけにすぎない。

サケ科の中で、日本人に一番馴染みの深いのはサケ(シロザケ)だろう。産卵期は9月~翌年2月。秋に獲れるのでアキアジとも呼ばれるが、そのほかにも成長度合い、漁獲時期によって別の名で呼ばれる。例えば、その年の秋に産卵するサケで5~6月に北海道、東北沿岸で獲れたものはトキシラズと言う。産卵期が近いサケはエサを取らず、卵巣・精巣の成長や河川の遡上に栄養を使うため、身が細り、味も落ちるが、トキシラズは産卵期までに半年あるため、ほどよく脂が乗っている。また、鮭児(ケイジ)は、翌年以降に産卵する未成熟のサケが知床半島沿岸に接近した際、成熟したサケと一緒に捕獲されたもの。脂肪分が多くて美味しく、極めてわずかしか獲れないため珍重されて高値で取引される。

サケ(シロザケ)

養殖物以外は、生食は避けて

サケ科の魚のうち、サケ、カラフトマス、ベニザケはほとんどが天然物。一方、養殖が多いのはタイセイヨウサケ。成長が早いため世界中で養殖され、ほとんどが養殖といっていい。ノルウェー、チリ、タスマニアなどから輸入され、刺身や寿司ダネとして定着している。

近年はサケ・マス類を生で食べる傾向にあるが、これには注意が必要だ。養殖の場合はエサを冷凍や加熱処理するので問題ないが、天然物を生で食べると、エサを通して魚体に入った寄生虫に感染する可能性がある。感染を防ぐには加熱、または-20℃以下で10数時間冷凍すること。北海道の郷土料理ルイベは、生のサケを凍らせて薄く切った刺身で、感染を防いで美味しく食べる知恵だ。

養殖物は早く成長させるためエサを与え続けるので、脂肪が多いのが特徴。エサはイワシ類などを加工したものが主だが、赤色を出すため甲殻類も与える。サケの身の赤色は甲殻類が持つ色素アスタキサンチンに由来するのだ。アスタキサンチンは、活性酸素の害から体を守る抗酸化作用が注目されている。

坂本 一男

水産学博士。水産物市場改善協会・おさかな普及センター資料館館長。魚のエキスパートを育てる日本おさかなマイスター協会の講師

文=芦部 洋子