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魚を巡るホントウの話

養殖物も質が向上したアユ

2010年5月17日

アユ

夏に旬を迎えるアユは、古代から日本人に愛されてきた。「万葉集」には、アユを詠んだ歌15首が載っており、「日本書紀」には、神功皇后が出兵の成否をアユ釣りで占った話が書かれている。「もし出兵が成功するなら、川の魚よ、この鉤(はり)を飲みなさい」と祈りながら鉤を投げ入れると、見事にアユが釣れたので、皇后は出兵を決意したという。この故事から、「鮎」(魚偏に占う)という字をアユに当てるようになったとされる。ちなみに中国では「鮎」はナマズを指す。

アユ (写真は養殖物)

晩秋に川の中流域で生まれたアユは海で越冬。春に稚アユとなって川をさかのぼり、中流域に着くと、それまでのとがった歯からクシのような歯に生え変わる。このクシのような歯を使って、石の上についている藻類を食べるため、独特の風味があるといわれる。

晩秋に卵を持った雌は子持ちアユとして珍重される

晩秋に卵を持った雌は子持ちアユとして珍重される

天然アユは藻類を食べて育つが、かつて養殖は生の魚(イワシなど)をエサにすることが多かったため、数十年前には「養殖アユはイワシの味がする」と言われることもあった。現在では、天然に近づけるため魚粉に海苔や緑藻類を配合する業者もあるそうで、品質は非常に向上している。

体色は、天然アユが黄色がかっているのに比べ、養殖物は黒っぽく、顔も体も丸みを帯びている。

坂本 一男

水産学博士。水産物市場改善協会・おさかな普及センター資料館館長。魚のエキスパートを育てる日本おさかなマイスター協会の講師

※ アユの写真は坂本一男氏提供

文=芦部 洋子