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食の未来は大丈夫か?

地球規模の食料危機回避へ(後編)

2008年4月21日

キーパーソン・インタビュー/平岡泰樹
聞き手=加藤秀雄

平岡 泰樹(ひらおか・やすき)
カゴメ 取締役常務執行役員

1944年生まれ。67年九州大学農学部卒、同年カゴメ入社。92年商品企画部長、96年取締役。業務用営業部長などを経て、2001年常務取締役に就任。現在、取締役常務執行役員総合研究所長。

原料からの一貫生産体制は
ブランドの維持にも必要になる

平岡 今まで投資というと、売る側にお金を使ってきましたが、これからは仕入れにお金を使わなくてはいけない時代になります。

● マーケティングや宣伝よりも、仕入れに投資をすべき時代だと。

平岡 泰樹氏

平岡 ただこれは、原材料の確保ということだけではなく、消費地立地型の強いブランドを持った企業では、原材料の調達から最終商品の提供まで、一気通貫で持っていけるようにならないといけないという、経営的な側面もあります。日本市場だけでなく先進国市場はどこでも、トレーサビリティーとか安全・安心ということをますます求めるようになってきます。また、ブランドを持っている企業は、価格の安い流通ブランド商品との競争があります。同じ一次加工品を使って、ブランドが付いているかどうかの違いだけであれば、消費者はすぐに分かります。食品は他の製造業と違い、加工度がある意味低いですから、ブランドを守っていくためには、原料の品種とか一次加工の仕方からも違いを出さなければいけません。安全・安心の問題でも、すべてを自分で手がけていて、コントロールしている、顧客・市場からの要求へレスポンスが早いということが大切です。原材料の調達・確保という面だけでなく、カゴメの経営基盤を強くしていくためにはどうしたらいいかという問題でもあり、行き着いた先が同じ結論であったということでもあります。海外の企業に対しては、これまでのように少し資本参加した、機械・技術投資をしたという関係から、もう一歩踏み込んだ関係を築いていくということですね。

● なるほど、よく分かります。ただ、本当に食料の奪い合いが始まったら、海外に親戚がいても、最後に頼りになるのは、国内の農業、農地だということはないのでしょうか。

平岡 それはあると思いますが、あまりにも国内の農業は競争力がないし、農政が無策だと思います。その場しのぎで、その時の不満を回避するためにだけお金を使っていて、国内の農業が競争力を高めるという手を打っていません。ただ、海外の農産品が値上がりしていることや為替相場の変動により、冒頭に申し上げた海外産農産物と国内産の価格差は、以前の10倍から、今はだんだん近づいてきているのです。

● そうなのですか。

平岡 ただ、日本の耕地面積や農業人口などを考えた場合、国内の食料自給率を100%にするということはまず無理ですね。だいいち農業用水が足りないでしょう。日本では年間平均1800mmの雨量がありますが、国民一人当たりの降水量はイランやイラクより若干多い程度です。しかも、降った雨の4分の3は、あっという間に海に流れ出してしまう。

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